すずき

スローターハウス5のすずきのレビュー・感想・評価

スローターハウス5(1972年製作の映画)
3.7
主人公、ビリー・ピルグリムは、「精神が自分の意思とは無関係のランダムに、過去や未来へジャンプする」能力の持ち主。
つまり、ある時は青年期ナチスドイツの捕虜になった自分に、またある時は息子がグレて警察のお世話になった日の自分に、またある時はトラルファマドール星で暮らしている自分に、またある時は妻と結婚した日の自分へと、魂のみタイムワープするのだ。
そんな彼の生き様、人生観を描くSFヒューマンドラマ。

主人公の能力の所為で、映画の時系列も滅茶苦茶にシャッフルされていて、72年とは思えない斬新な構成!
青年期にドアを開ける→ドアを閉じると中年に、とか、捕虜になってカメラを向けられる→結婚式の集合写真に、とか、時代が切り替わる瞬間の演出がカッコいい!
ともすれば複雑で難解な映画になりそうな所を、かなり分かり易くまとめ上げた脚本も見事。

未来の記憶を持って過去を繰り返す、所謂「ループ物」に似たような設定だけど、主人公は未来を改変しようと行動する事は、劇中に一度しかない。
その一度も微妙な描かれ方なので、果たしてその能力はホンモノなのか、主人公の妄想ではないのか?とも思って観ていたけど、クライマックスの衝撃の展開で全て腑に落ちた。

しかしまあ何というか、地味なお話ではある。
主人公はヒロイックな活躍するわけでもなく、衝撃の展開っていっても映画冒頭でネタバレしてるし(このレビューでも)、人によっては、なんじゃそら、って思うラストでスッキリしないかも。
ある意味ポジティブ、ある意味ネガティブな主人公の人生観に共感出来れば納得できるラストだとは思うけれど。