セガール幹事長代理

影武者のセガール幹事長代理のレビュー・感想・評価

影武者(1980年製作の映画)
5.0
【あらすぢ】
甲斐の虎こと武田信玄が死んだ。
周囲が敵だらけの武田家がとった策は偉大なカリスマの影武者を置き、信玄が生きてるっぽく振る舞うことであった。
だいたいそんな感じ。

【時代背景】
桶狭間の戦いで今川義元を討ち取ったことをきっかけに調子に乗りまくっている織田信長を四方八方から潰しにかかる『信長包囲網』の真っ最中。
武田家は信長潰しの最有力大名だが、武田は武田で
北陸の戦闘狂・上杉
関東の覇者・北条
未来の天下人・徳川
第六天魔王・織田
に銃口を向けられているピリピリした状況でもあった。


まず謝らなければなるまい。

武田信玄。
すぐ同盟国裏切るクズだって思ってたのを許して欲しい。
実の息子を謀反の疑いで切腹させた只の畜生だと思ってたのを許して欲しい。
彼氏(高坂昌信)に浮気がバレた時に『いや、口説いたは口説いたけど結果的にフラれたから浮気じゃないよ!お前が本命だよ!』っていう言い訳をかました軽薄さを嗤ったのを許して欲しい。

これも戦国の世の習い。
いつも彼は彼なりの最善を尽くしていた。
最善を尽くしていたからこそ、死してなお、衰えるどころか膨張する“武田信玄 ”という巨大なブランドの影に人々は怯え、振り回され、心を病むのである。

信玄の影に一番ビビってたのが信玄の影武者っていうのは一種の哲学性すらあったし、生者の疑心暗鬼をせせら笑うかの様な『死んだ人間の為に死ぬ人間は影ですらない』『影に影は起き得ない』という台詞が非常に印象に残った。
乾いた笑いの後に押し寄せる謎の虚しさでストレス値と血圧上がった気がした。

トドメを刺すかのような、武田軍VS織田・徳川連合軍による長篠の戦いで鳴り響く軍太鼓が夢幻の如く、って感じで気が滅入った。
多分負けるだろうなあ、っていう戦う前から戦意喪失している兵士の表情が物悲しく、居た堪れない。

本能寺の変まであと7年。
なんと目まぐるしい。


あと側室(第二の奥さん)たくさんいる偉い人のメンタルってすごいなって思いました。
側室同士で『お粗末だったわね』とか『フロントホックなのに背中で指がパニクってたわ』とか『毎回アルマーニのパンツ履いてるけどゴム伸びきってるわ』とか噂されるんでしょ。
そんなの無理。まっすぐ前向いて生きていけない。


ここ数年観た映画の中でぶっちぎりナンバーワンの面白さでした。
会話劇好きな人には自信をもっておすすめします。


紹介してくれたりょーこさま、ありがとうございました!