影武者の作品情報・感想・評価

影武者1980年製作の映画)

製作国:

上映時間:179分

3.7

「影武者」に投稿された感想・評価

金かかってんな~っていうのが率直な感想

登場人物は皆かっこよかった
yoshi

yoshiの感想・評価

4.6
時代劇は日本人の心です。武士道は日本人の道徳です。この映画には「義」が描かれている。打算や損得を超越し、自分が正しいと信じる道を貫く。武士道の中心となる良心の掟が義の精神。そして黒澤監督が生涯のテーマとした反戦の想いが込められている。
畏れ多くも日本映画の「神」黒澤明監督作品を初レビューです。

何故か「神様」黒澤作品にしては、この映画、あまり評判がよろしくない。
それはこの映画の製作過程を知る、私のような中年から、もう少し上の黒澤映画で育った壮年の世代のせいだろう。

カンヌ映画祭グランプリ獲得作品。けっして出来が悪い訳ではない。

「義」の精神と「反戦」への想い。
この2つの理由で、私は擁護します。

それにはまず、世間一般に評価が低くなってしまった理由を挙げなくてはならない。

私が子どもだったころ、再放送を楽しみに見ていた座頭市の主役だった勝新太郎がこの映画の主役として出ると知ったときは、素直に面白そうだと思ったが、すぐさま降板のニュースが報道されたことを覚えている。

勝新がもし出演していたら、彼の風貌は歴史の教科書で見る武田信玄と瓜二つなので、私も世間の興味も増していたに違いない。

威風堂々とという印象の信玄を演じるのは、どちらかというと庶民的な役柄が多かった勝新にとっても大きなチャンスだっただろう。
きっと下賤な盗賊の演技はお手のものだったはず。

私はあまりに子供だったので、劇場では見なかった。青年期にレンタルVHSで、この作品を観たが、どこか淡々としていて煮え切らない印象を受けた。

もしかすると勝新太郎が降板した時点で、私は興味を失っていたのかもしれない。
偉大な侍大将と戦国時代を逞しく生き抜く盗賊。勝新ならどう演じただろうという視点が、私の中に常に存在する。

仲代達矢も素晴らしい俳優だが、「切腹」や「用心棒」「椿三十郎」など神経質で気品ある役柄が多いため、盗賊のいかがわしさが感じられなかったのだ。

頑丈な家の大黒柱(勝新太郎のカリスマ性)が折れた(降板した)。
しかし代わりの柱の影響力は乏しく(仲代達也の代役)、他の柱(助演の俳優たちの好演)でしばらく何とか支えたが、結局はゆっくりと家が潰れていく様子を観せられる。

それが若き日の初見の印象だった。
世間様もそうだったに違いない。

時は流れ、再見する機会を得た。
物語に込められた意味をじっくりと考えることができた。
冒頭で武田信玄(仲代達矢)、信廉(山崎努)、影武者となる盗賊(仲代達矢)が同時に登場するシーン。三角形の構図だ。
3人は我々観客の正面を向いている。
まるで舞台の劇のように。
その底辺にいる盗賊は我々庶民なのだ。

信玄の狙撃場面で明らかなように、信玄と謙信が戦場で刀によって斬り結ぶ川中島の戦いのような古き良き時代は去った。
雑兵でも銃弾一発で大将首を狙える。
武器の優劣によって戦局が変わる時代に突入する。

影武者の男は、身分も低く、窃盗により死罪にかけらていた男だった。
つまり彼は武士でもなんでもなかったのである。
それがいきなり、武田軍3万人の総大将となったのである。

これはつまり、武士ではない我々観客がこの影武者の視点から戦国の世を体験することができるということだ。

あなたがその立場だったらどうするのか黒澤監督の戦争への問いがここに見える。

諏訪湖に沈められる信玄の死を目の当たりにして、盗賊は「義」に目覚めた。
お金などは二の次。打算や損得から離れ、人の役に立ちたい、自分が正しいと信じる道を貫きたいと心から願った。
側近達の「忠」に呼応した「義」。

武士は損得を嫌う。人々の模範となる生き方を示し、武田という家を守りたい側近達の「忠」に感動し、武士になりたいと願ったのだ。

私たちは影武者を通して戦を体験する。

特にそれを如実に感じられるのは、高天神城での戦いのシーンだろう。

功を焦って高天神を攻めた諏訪勝頼(萩原健一)の後詰として、影武者を大将とする軍勢が陣を張った。
時刻は夜半。周囲は暗く、かがり火がともされているのみ。

そこへ銃声が鳴り響き、敵陣が押し寄せたため、周辺の兵は槍衾(要は人間の壁)をつくって影武者を守る。

味方は攻撃をかけるも、その合間を縫って、敵兵が火縄銃を撃ってくる。
槍衾の兵たちはただ反撃もせず、その銃弾を受けて一人二人と死んでいく。

武士達は決然として、それを受け入れているが、影武者は気が気でない。
やがて味方の尽力で、敵は散会する。
一息ついた影武者に、供の者が言う。
「見ろ。この兵はお前を守るために死んだのだ」

それを見て、はっとする影武者。すると彼は威風堂々と山のように構え、押し寄せた本田忠勝の兵を睨みつける。忠勝の軍勢はそれを見て、逃げ帰るのだった。

下賤の者だった影武者が、本当の武士になるシーンだ。
そして、これを見ている私達も本当の武士になれた気がするのだ。
影武者と共に「義」を果たした気になる


ラストの長篠の戦いは、たった15分ほどだが、黒澤監督の反戦への想いが込められている。

騎馬戦と足軽による白兵戦が主体だった戦国時代において、織田信長による鉄砲戦術の革新の実験台になってしまったのが武田軍。

竹槍で原爆と言う近代兵器に立ち向かう第二次世界大戦の日本とアメリカの関係そのものだ。

故にあまりにあっけなく勝敗がつき、奇妙な合戦シーンになってしまったのは必然だったのかもしれません。

迫力があったとは言えないものの、破れる武田軍の死体の山。その悲惨さには二度と戦争してはいけないと言う想いが込められている。

エキストラだけではなく、100頭以上もの多くの馬を使っての死屍累々のシーンは、被爆者やホロコーストに見える大量虐殺。

なんといっても足を動かしてる悶える断末魔の馬の映像は物悲しい。本当に馬を傷つけたのかと思える。
(実際には撮影で馬に麻酔をかけたそうです。)

「きっと映画の力で世界から戦争がなくなる。それが映画の力だ。」
遺言で残したように反戦が黒澤監督の生涯のテーマ。
呆気ない武田軍の敗北に、残酷な暴力を長々と見せるよりも良心を感じる。

先に主演の交代が残念だったと言うように書いたが、仲代達也は悲劇が良く似合う。
影武者だということがばれて、城から追い出され、石つぶてを投げられるシーン、最後に武田の旗印を追い、哀れな死を遂げるシーン。
戦いの無情が伝わる名演技である。
これらは勝新太郎では想像がつきにくい。

助演陣も良い。
公開当時は萩原健一への批判が多かったが、勝頼の役柄上、武田の家を守ろうとする焦りと劣等感で身を誤る自身の行く末を身体全体で表していた。

当時新人だった隆大介の織田信長も豪放磊落を表現して良い。あの南蛮鎧をつけたあのスタイルの良さ!
その後の時代劇や劇画、ゲームソフトに至るまで、信長のイメージを決定づけたのではないだろうか?

特筆すべきは信玄の弟、信廉役の山崎努。
武田家の行く末を人一倍案じ、影武者である盗賊の行く末までも気を配る、武士の情け、仁の精神が彼には内在していた。
弱き者や負けた者を見捨てない心は高潔ですらある。
そして、武田家にとって自分が正しいと信じたことが最も良い選択と信じ続けて行動した「義」の精神の持ち主である。
つまり仁と義に溢れた武士の鏡なのだ。

長篠の戦いで滅び行く、長らく守り抜いた武田軍を、顔面蒼白で刮目して見届ける信廉の表情には観る度に泣けてしまう。

黒澤監督の映像表現も良い。
高天神城を囲む信玄本陣をローアングルで捉えた威圧感。
影武者の観た極彩色の悪夢。
長篠の戦いに敗れ、風林火山の旗が川底で揺らめくラスト・シーンなど多くの場面で映画的表現の凄みを堪能させてくれます。

そして誰が何と言おうと、何と言ってもカラーであの煌びやかな衣装、戦と雄大なロケーションを観ることが出来るなんて!

(「七人の侍」他、白黒の黒澤時代劇をカラーで観たいと思ったことは、ファンならばあるはずだ!製作に資金援助したジョージ・ルーカスとフランシス・コッポラは少なくともそう思っていたはず。)

映画全体のテーマは影武者を含め、武田信玄の巨大な「影」に踊らされる人々だが、その影とは黒澤明監督自身のことのように思えてならない。

日本映画の斜陽の頃。
自身の過去作と評価という巨大な「影」を超えなくてはならない重圧、主役の降板、そんな困難を乗り越えて、ギリギリのところで咲いた巨匠の味わい深い作品である。
どっぷりと時代劇に浸かる。オープニングの異様な構図、三者三様の佇まいが格好良い。夜の合戦シーンは画面が暗くとても見辛かった。長いっす。
bonotarou

bonotarouの感想・評価

3.5
黒沢映画の中でもお気に入りの作品です。
改めて見ると、凄いキャストですね。
さすがは信玄、死してなお3年の間、よくぞこの信長を謀った。

この信長が今まで見た信長で1番信長感がある。

長すぎたのと重厚すぎて疲れた。

初めて見たのは小学生の時でジジー(仲代達矢)がウロチョロしてたら死ぬって記憶しかなかった。見直して良かった。

同じく小学生の時に見てオカマが騒いで城が燃えるしか記憶がない乱も見直さないと。
信玄公が狙撃される野田城の戦いに始まった武田信玄影武者物語は長篠の戦いで幕を閉じる
黒澤明中期作品で銀幕に輝く三船敏郎に惚れ倒したが、後期作品も観るようになって仲代達矢のカッコ良さもしみじみと感じるようになった
書庫番

書庫番の感想・評価

4.7
2018年10月7日 U-NEXTにて視聴。

「さすがは信玄、死してなお、3年の間、よくぞこの信長を謀った」

劇中のこの台詞は、公開当時のTVスポットでフィーチャーされていて印象的だったのを鮮明に覚えている。

信玄の弟によって信玄の影武者に仕立て上げられた盗っ人の運命を描いた悲喜劇。
たった一度の対面と、その後の骸との再会で、本格的に影武者として生きる覚悟を決めた盗っ人。
持ち前の度胸と勘の良さで、影武者としての使命を恙無くこなして行く男の姿を、仲代達矢が圧倒的な演技で魅せる。

影武者という存在を超え、信玄公として乱世を生き抜く覚悟が、正体の露見に繋がるという皮肉な展開。
一人の元盗っ人に戻った男が、阿鼻叫喚の地獄絵図と化した長篠の戦いに、幽鬼の如き表情を浮かべて現れる様は圧巻。

前述の長篠の戦いを始め、冒頭の城内シーンなどに見られるリアルな迫力の映像に加え、影武者が見る悪夢の幻想的な映像美が観る者を圧倒する。
tohtan

tohtanの感想・評価

3.8
やっぱり黒澤監督の独特な世界観が溢れる力作です。スタッフ&キャストも一流を配してスケールも桁違いです。キューブリックの「バリーリンドン」を彷彿させるような風格と重厚感があります。難を言えば長いね。
TSUBASA

TSUBASAの感想・評価

3.3
短文感想 73点
何気に黒澤明監督のカラー映画は初めて見るかもしれません。本格的な時代劇であり、スペクタクル巨作として海外でも有名な作品です。戦国時代最強の武将の一人、武田信玄の影武者を小泥棒が演じるという悲喜劇。自分の死を隠すために影武者を用意するというのは古今東西の権力者がよくしてきたことですが、士気に関わることも多いので、日本でも戦国時代にはよくあった模様。影武者と武田信玄の両方を演じた仲代達矢の演技は圧巻です。
仲代達也の演技に感動した。全体的に一人芝居を見ているようだった
周りのキャストも凄い。特に大滝秀治はとても印象深かかった
合戦シーンや部隊移動は流石、黒澤明って感じの圧倒的な雰囲気!重厚感にお腹いっぱいって感じ
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