この中年キャスティングがスゴイ!
中井貴一主演、森崎東監督による浅田次郎原作の映像化作品。製作はハリボテのような経緯で決まったが、それにしてはよく出来ている。クズのような暮らしを送る吾郎のもとに舞い込んだ偽装結婚。結局は偽妻の死までなにも感じていないままだったが、その遺体を引き受けるところから思いもしない感情が動き出す。とことんダメな人々がたくさん出てくるが、それを咎めたりせずさりげなく描く。
面白いのは、序盤が新宿の喧騒、後半が千倉が舞台になっていき、ラストは「鉄道員」のようになっていく、動から静に移行していくのに対して、中井貴一演じる吾郎はむしろ静から動へと変化していくところ。物言わぬ小市民が覚醒したかのように啖呵を切っていくところは本作の大きな見どころと言える。
なにより、おっさんおばさんのキャスティングが素晴らしい一作で、根津甚八、柄本明、倍賞美津子、名古屋章、大地康雄、大杉漣、笹野高史、内田春菊など…が重要な役から端役まで愛らしいキャラクターでバンバン出てくる。他の人も多く挙げているけど山本太郎もいい役、いいパフォーマンスだった。