フジタジュンコ

ドッグヴィルのフジタジュンコのレビュー・感想・評価

ドッグヴィル(2003年製作の映画)
4.5
驚くべき舞台装置、意表をつくシナリオ、役者たちの鬼気迫る演技、トリアーの皮肉と意地悪さ、すべてがマッチした凄まじい作品。

空間がすべてひとつになっているがゆえに、世界ってこんなふうになっているよな、ということに改めて気付かされる。
壁(これはさまざまなメタファだ)を隔てたむこうで誰かがレイプされていても私たちは気づけないし、たぶん気づいていないし、気づこうともしない。この世界の生贄のようなグレースの首に繋がれる鎖とひたすらな暴力が痛ましい。

おそらくドッグヴィルの住民たちは、「私」そのものでもあるだろう。だからこそいたたまれないし、目が離せないし、この作品をまた見たいと思わない。燃やせ!!もっと燃やせ!!!と拳を握らざるをえないラストシーンのカタルシスもたぶん、燃やされるのはこの「私」ではなく、私たちはどこまでも無責任な傍観者だからだ。