三樹夫

ストレンジャー・ザン・パラダイスの三樹夫のレビュー・感想・評価

2.5
ハンガリーから女の子が来て、友達も入れての3人での共同生活というのでストーリー説明が終わる。つまりこの映画にストーリーはほぼない。3人の若者の退屈なダラダラした日常が映し出されるが、若者の日常って退屈でダラダラしたこういうもんだしみたいな、若者の退屈なダラダラした日常をそのまま体現したかのような映画になっている。
観ててこれは絶対ミニシアター系だと思ったら、日本では公開当時「ザンパラ観た?」と若者の中で超絶流行ったみたい。というので私みたいな人間は完全にお呼びではない。おそらくどこかの個人経営みたいなカフェやバーで今でも流されていそうな映画で、男2人が室内でもずっとハットかぶっていたり、車の窓ガラスから風景として映る工業地帯みたいなところとか、自然体ではありながらもカッコいい感じとか映えるようなところをしっかり切り取っている。ウィリーってずっとハットかぶってサスペンダーしてたりとか恰好が結構オシャレで、ある程度意識してオシャレ的なものとかカッコいい的なものを映画内に入れているように思った。『東京物語』とか目くばせ的に(アメリカのある種の若者にとっての)オシャレアイテム配置して、しかし登場人物たちが実際に観るのはカンフー映画とハズしてくるのも、ちゃんとツボを押さえて心をくすぐっているように思う。雰囲気映画として、自然体に見えるように計算してしっかり作られた完成度の高い雰囲気映画のように思う。
外国人など異物的な自分とは異なったキャラクターが世界に入ってくることによる物語展開は『ドラえもん』などでも行われるかなり王道のパターンだが、この映画はそっち方面には行かないというのも心をくすぐるものがあるように感じた。

劇中『東京物語』というワードが出てくるが、ジャームッシュが小津映画の影響を受けているのも日本人と相性がいい要因なのかな。当時の若者だけではなく黒澤明、大島渚、山田洋次も褒めていて、特に黒澤明は結構熱量高く褒めている。
三樹夫

三樹夫