アンダルシアの蚊

ストレンジャー・ザン・パラダイスのアンダルシアの蚊のレビュー・感想・評価

5.0
“帽子兄弟2人と別嬪さんの栄華之夢”[100]
[楽園よりも奇妙な旅]
黒澤明が絶賛していた映画でありインディーズ映画の最高傑作の1本。まさに金字塔にふさわしい。

あらすじは、ニューヨークでヤクザな暮らしをしているウィリーが、叔母の頼みでハンガリーから渡米してくる従妹エヴァをしばらく預かるハメに。最初は邪険にしていたウィリーだったが、そこに賭博仲間のエディが加わり…(Apple TVから引用)ってな感じの話で、ストーリーも何が起きるわけじゃないし、淡々と進むけど何故か面白い、面白くさせる何かがあるんだろう。旅が始まってからがめちゃくちゃ面白くなる、その前からもちゃんと面白いのに。旅が始まってからは5点、男ふたりと女ひとりで旅に出る。最初は順調にいってた、でもだんだんと男女の価値観の違いがではじめて破滅に向かってくのがリアル。ちゃんと笑えるシーンがあるからめちゃくちゃ面白い。特に別嬪さん、帽子兄弟、イカさない男の4人で映画を見るシーンは笑ってしまった。白黒だからこそ良さが出ているのだろう、カラーだったらこれ程評価も高くなかったはず。

ジムジャームッシュが創る”独自の光”が奇妙にこの世界を包み込み、アメリカの現実を映像化している。「東京物語」や「晩春」などといった映画の名前が出ていたが、小津安次郎のようにカメラが動かなく、どことなく似ているような気がする、リスペクトしているとこもあるのだろう。これが初長編映画とは思えない。トリュファー、ラヴディアスのような雰囲気もありつつ独特なジムジャームッシュ色もしっかりあるのが初めてなのにマジですごい。こんな映画作ってみたいわ。

何かが起きそうなのに、何も起きない、いや何かが起こってるのかもしれない。でも何も”変わらない”って感じの映画。

派手な映画が好きな人からしたら地味に感じるかもしれないけど、ちゃんと話は面白いから楽しめる。