このレビューはネタバレを含みます
[暴力という無関心、再生という愛情]
“誰がなんと言おうと、俺は待つ”
“みんな同種同類でいい奴じゃないか”
“海溝の様に深い傷(心)は、言葉にし得ない愛情で復興し再生をし進化する。”[100]
[Special ATB]
”日本映画で最も重要な映画の1本。“
我が同郷の青山真治監督の代表作。
前々からめっちゃ見たかったから、ついに見れた。なんだろうな、”福岡”というか”田舎”のパワーを感じる。念願の映画だったから、もちろん面白いだろうなと思ってみ始めた。こりゃいい話だ、あらすじは九州の田舎町で、バスジャックに遭遇し生き残った沢井(役所 広司)と中学生の直樹(宮﨑 将)と小学生の梢(宮崎 あおい)の兄妹二人は大きな傷を負い、2年経っても、その傷は癒えていなかった。そしてひょんなことで沢井と兄妹二人、さらに2人の従兄秋彦(斉藤 陽一郎)の四人で暮らすことになる…
“殺す(暴力)”という行為に躊躇がないというか、感情がないというか、殺意を感じない。まるで、「クーリンチェ少年殺人事件」のような感じでもあるし、「立ち去った女」のような匂いも同時にする。大好きな匂いだ。また、すごく現実色のある映画だが、非現実的に見える。”現実的な非現実的。心情はこの世界そのものだ。”それは、役者たちの演技があってからこそに思える、「ハッピーアワー」や「ドライブマイカー」などに出ている役者たちの、演技を彷彿ともさせる。別のものだけど。
役所広司はもちろんのこと、安定で素晴らしい演技。兄妹二人の役が実際の兄妹だったりして、細かく、やっぱり質が違う。何だろうな、演技に”親密さ”があるというか。松重豊がええ男やな〜 、それに、オレンジの画がなんかいい、あえて古さを感じれるというか、こうゆう画は好きだ。我々を包み抱くような、パワーを感じる。サントラも素晴らしい、哀愁に浸る。巧みの映画だ。
静かなる銃声、度重なる怒号、無関心の暴力、癒えない傷、大丈夫は大丈夫じゃない、一方に増える悪、変わらない正義、異なる慈悲を持つ母、トラウマになるべくしてなる、田舎の親密さ、常識のない良心に満ちた男、堕ちた感謝、子供には荷(苦)が重すぎるぜ…
「“癒えない傷は、癒えない傷を負った物同士が治すんだ。”」
沢井は2人に出会った時、”ボランティア”のような形で救っているように見える、別の言い方をしたら、勝手に哀れだとか可哀想だとか思い、”見かけの慈悲”を渡していたのではないかと思う、または”父性の演技”をしているように見えた。だが、直樹が墓場を壊すという、憎しみと悲しみの塊の行為をしたことによって、沢井は真に、哀れや可哀想だということを思い、旅へ出かけ、本当の意味での第2の父性(見る限り、2人からしたら実質的に初めての父性の可能性だってある)となり、”真の慈悲”へと変化したんでは無いだろうか。2人も、次第に心を開いていくのだが…
「“完璧に再生した後、色が変わる。”」
直樹は人を殺していた、だが沢井は本当にいい男だ、どれほど悪い事をしようと、直樹を許し、父として言葉を掛けた。
「“生きろとは言わん、死なんでくれ。また、会おうで。”」
言葉なんかいらない、”親密さ”を持って接すれば、それは”会話”になる。
「“よーっと見とけよ”」
最後の「梢、帰ろお」というシーンは最高のショットであり、それと同時に最悪のショットでもある。それは、沢井は咳をし、血を出している、終末に近づいていっているのだ。
同郷に、こんなにも素晴らしい映画を作ることが出来る映画監督が居たことに、感謝感激や。俳優はやっぱ、当たり前のように高倉健は福岡の誇りだ、青山真治もそれと同じぐらい、誇りだ。
2日連続でたまらない作品を見れた事に、感謝だ。5をつけ、無論オールタイムベストだ。