このレビューはネタバレを含みます
トニーレオン、謎の1分間。
まぁ、あれがなんだったのかググれば分かるんだけど、ウォン・カーウァイらしい理由だよねw
気ままな振る舞いとは裏腹に、ヨディには二人の母に心を縛られているようなところがあった。
彼に対して「正常な愛」が注がれていれば、こういう人格形成はされなかったであろうことは容易に想像がつく。
「でも鳥はもう飛ぶ前に死んでたんだ」
これは諦めの言葉だったのだろうか。
自らの人生に白旗を上げたのだろうか。
愛を受け取って来なかった人間が、人の愛し方や愛され方に難が出てくるのは仕方のない部分がある。(養母とは相互に一定の愛情はあったようにも見えるけど、愛憎入り乱れていて、いささか複雑なんだ)
ヨディという人間は、愛され方を知らずに生きてきたがゆえに、地上に降りずに風の中で眠り続け、次々と女性を取り替えていくことで自己防衛をしていたように見えた。
フィリピンで実の母に拒絶されたことで、
「俺の人生はどう足掻いたって愛に見放された人生だった」という想いに至った結果、
「飛ぶ前に死んでいた」
という言葉に繋がったような気がしたな。
死に際に、「あの1分間」のことに即座にピンときたヨディにとってスーは特別な存在になり得たのだと思った。
本当はスーのために地上に降りたい気持ちも、どこかで芽生えた瞬間があったんじゃないのかな。1分よりもっと。