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ALWAYS 三丁目の夕日’64のおなべのレビュー・感想・評価

ALWAYS 三丁目の夕日’64(2012年製作の映画)
3.8
豪華キャストを迎え今回シリーズ3作目となる『Always 三丁目の夕日 64』。今回の舞台は東京オリンピックが開催された'64年 東京。既に“三丁目の夕日 ロス”になりつつある…。3D上映を意識してか飛び出すシーンがちらほら。1作目が「出会い」2作目が「苦難」なら3作目のテーマには「旅立ちと始まり」が相応しいかと。

少なくともこの映画を観て[家族の絆・人を愛するという事・本当の意味での幸せ]など人生において大切な事を改めて実感させられました。《三浦友和》さんがふと放った台詞「幸せとはなんでしょうなぁ…」という言葉、その答えがこの作品の隅々に詰まっています。おそらく《山崎貴》監督もテレビもゲームもパソコンも無い昭和時代の家族を描く事で、そう言った人間生活を営む上で本質的に大切な事を改めて現代に問いかけたのだと思います。

《堤真一》の演技がとにかく良い!自然体な演技で、かつ声の通るかなりのイケボ。勿論《吉岡秀隆》を始めとするその他俳優・女優陣も全員の目がキラキラしてて、それでいて決めるところはきちんと決めるような味のある演者ばかりでした!

サントラがとにかく良い!夕日町三丁目の壮麗な夕焼け(夕陽)を見つめる家族をバックに、感動を唆られるサントラが流れてとても優しい気持ちになりました。何もかも忘れて夕陽に没頭できるような、そんな貴重なワンシーンでした。

三部作総じて言える事は、人間生きる上で大事なことは家族でも、友達でも、恋人でも、誰でもいいのに繋がりを作る事だと思います。今作のような人情味溢れる人間関係はできすぎですが、孤立・無縁社会に陥っている現代であるからこそ地縁であったり人間関係を築いていくことが大事であると思います。


【以下ネタバレ】


◉結婚が決まった六ちゃんとそのに対し、《堤真一》演じる鈴木オート社長鈴木則文が何の血縁関係の無い六ちゃんをまるで我が子のように送り出すシーン、夫である菊池に対し「六を幸せにしなかったら俺がお前を殺すっ!」という台詞に、思わず涙が出てしまい感動しました。

◉子どもの巣立ちというのはどうしてこんなにも切ないのでしょうか。今作では六ちゃんや淳之介が自立し、新たな人生を歩み始めるのですが、自分自身親の立場になって見ていると、いつか来る運命だと覚悟はしているつもりなのにまるで永遠の別れのように感じます。いつか自分が親になったら鈴木夫妻のように優しく見送りたいです。

◉《吉岡秀隆》演じた茶川竜之介のダメダメ感がまた良いんですよね。淳之介に自分と同じ道を辿って欲しく無いという想いと、夢を諦めさせる罪悪感との葛藤がもどかしかったです。今作を見ながら第1作目で初めて2人が会った時の事を思い出して涙がこみ上げてきました。

◉人情とは言葉では説明できないけど結局は相手を想う優しさだと思います。人と人との繋がりが濃密だから人情が芽生え、自分も相手も優しくなれると思います。まさしく現代に足りない要素で、今一度昭和の古き良き時代を回顧する必要があるのではなきでしょうか。
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