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わたしたちの宣戦布告のemilyのレビュー・感想・評価

わたしたちの宣戦布告(2011年製作の映画)
3.8
出会ってすぐ恋に落ちて、結婚したロメオとジュリエット。アダムと言う息子にも恵まれ幸せな結婚生活を過ごしていた。そんなある日息子が悪性の脳腫瘍だと告げられる。5歳までは少なくとも生きられると言われたことをポジティブに捉え、二人はお互いに支え合い困難を乗り越えて行く。

監督兼主役を務めるヴァレリー・ドンゼッリとその元パートナーのジェレミー・エルカイムに、大きくなったアダムには二人の実の息子も出演。実体験に基づいているので、夫婦の絶妙な距離感やはしゃぐ姿に流れる空気感は二人ならではの物である。

難病をテーマにしながらその描き方はシリアスな泣けるドラマにはなっておらず、赤と青のコントラストで夫婦間や現実と夢みた生活を交差させ、スタイリュシュな音楽による切り替えで、どこかポップでみずみずしい二人のラブストーリー主体になっている。

二人の歌声が交差し、ミュージカル調になったり悲劇から喜劇へと演出する、不具合なクラッシックやオペラを巧みに挿入し、取り巻く周りの人たちの落胆の中の日常をしっかり描く。一種異様な空気感を、行き来し、冷ややかな笑いを生み出しながら全く嫌味がない。それも言葉ではなく音楽と行動でまるでPVのように綴っているからだろう。

アダムの苦しい時期はマラソンにたとえ、そのイメージ像をしっかり挿入し、それでも日々は流れ悲しみの中にも笑顔がある。なぜならふたりだからだ。一人なら耐えられないかもしれないが、ふたりだから、寄り添ってくれる人がいるから乗り越えることが出来るのだ。

冒頭からアダムは成長して生きてることを見せてから、描写していくので、悲劇に転んでも死につながることはないことをはじめから示している。だからこそ観客も終始穏やかな気持ちで観ることが出来る。

そうして頼りなかった二人が子供の病気により、苦戦しながらそれでも前向き、それにより成長し結束を強めていく姿に、気がついたら前向きな気分にさせられている事に気がつくだろう。すべてを犠牲に息子の回復だけを、願い過ごした日々の苦しさはそのまま夫婦の強さになり、アダムへの愛へとつながるのだ。


難病の悲しさよりそれによる夫婦の結束の強さと愛の深さを瑞々しくスタイリッシュに描くことで、それでも人生悪くないと思わせてくれる。
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