ユカリーヌ

BUNGO ささやかな欲望のユカリーヌのレビュー・感想・評価

BUNGO ささやかな欲望(2012年製作の映画)
3.8
【過去に観た映画】2012.10.15

大阪 梅田ガーデンシネマ。

昭和を代表する文豪たちの小説を基に、将来を担う映画監督や俳優たちが映画化したオムニバス6本。

【見つめられる淑女たち編】
●「注文の多い料理店」(原作:宮沢賢治/監督:冨永昌敬)

原作の紳士二人を不倫関係の男女にしているのが面白い。
でも、男が宮迫なので、なんとなくテイストが土曜ワイド劇場
っぽくなっていたのと、伏線はっているのに回収ナシの
オチが残念。
石原さとみの脚にオイルを塗るシーンがエロティックだった。


●「乳房」(原作・三浦哲郎/西海謙一郎監督)

この原作を映像化するとかなり奇異な感じはするが、。
全体に漂うトーンが穏やかで自然に観られたが印象薄いか……。


●「人妻」(原作・永井荷風/熊切和嘉監督)

主演の人妻を演じる谷村美月がキュートなのに小悪魔的な表情やしぐさをみせるのが、けっこう萌える。
そんな人妻に妄想を抱く下宿人の男も色気があってイイ。
“悪魔のささやき”を映像化したのは大胆だけど面白い。


【告白する紳士たち】

●「鮨」(原作・岡本かの子/関根光才監督)

リリーフランキーは好きだけど、このキャスティングは
どうかなあと、個人的にはちょっと違和感。
少年が鮨を食べるシーンは、昭和の母親の愛があふれていて、
うるうるした。

●「握った手」(原作・坂口安吾/山下敦弘監督)

山田孝之と成海璃子というキャストがステキだが、
さすがに5本目となるとやや疲れ、単調なシーンに
少しうとうとしてしまった。


●「幸福の彼方」(原作・林芙美子/谷口正晃監督)

映画24区KYOYOの俳優ワークショップで講師をされた谷口監督の作品。
これが一番観たく、一番よかった。
脚本が鎌田敏夫というのもいい。

谷口監督から撮影秘話も聞いていたところだったので、
一つ一つのシーンが愛おしく感じられた。
とても丁寧に撮られている感じがしたが、正味3日間で撮ったというから、驚いた。

ワークショップに参加されていた女優さんも出演されていた。
個性的な笑顔で、素敵な方だと思っていたが、やはりスクリーンでみてもその笑顔が活かされていた。

ラスト近くの電車内でのシーンは微笑ましくて心があたたかくなった。

どの作品も昭和の良き時代の雰囲気が出ていてよかった。
「淑女編」はもう少し官能的かと思っていたが、
妄想しすぎか……。割と情緒的な感じだった。


観終わって、すぐに原作本を買って読む。
この原作をこんな風にシナリオにして、こんな風な演出で
映像にしたのかと、感心したり、自分ならこうするけどなあと思ったり、勉強になっておもしろかった。
ユカリーヌ

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