ユカリーヌ

追憶の森のユカリーヌのレビュー・感想・評価

追憶の森(2015年製作の映画)
4.0
【過去に観た映画】2016.4.29

アメリカ人の男が青木ケ原樹海に踏み入り、日本人の男と出逢い、二人で森を彷徨う。
   
死に場所を求めてやって来たのに、生きようとする二人というと、死生観とか神や魂の話のように説教臭いか辛気臭い話になりがちだが、これは極上の異色ミステリーだった。
   
またまた脚本の素晴らしさに魅了された。
泣かせるというより、自然に涙が伝う映画。
  
冒頭の無駄のないカットは台詞を入れずとも全てに意味があり、簡潔だが正確に伝わってくる。
   
樹海を彷徨いながらも次々と自然の過酷さに痛めつけられ、二人の男はより密になっていく。
キャストもよかった。
   
二人の会話、小道具、謎が散りばめられ、アーサーがここにたどり着くまでの過去が
間に挟み込まれていく。
そして、最後にその言葉、行動、歌、自然が
全てつながっていく。
   
はらはらドキドキさせる所もあり、「奇跡の人」の「ウォーター!」みたいな、
日本語を叫ぶ時は、会場から声がもれるんだよね。
私も声には出さなかったけど、心が踊った。
それだけ入り込めてしまう。
    
人生とは過酷であり、容赦ない。
愛がいつまでも同じでもない。
苦しみや悲しみが襲ってきたとしても、人はなぜ生きないといけないのか。
答えも意味などないのかもしれないけど、生かされているのかもしれないね。
   
人に求めたり、望んだりしちゃだめだね。
ましてや人を責めたらいかんね。
ただ、そこにいるだけでいいではないか。
いてくれるだけで……。
   
 
この映画のストーリーを聴いた時、ちょうど三浦しをんの短編集「天国旅行」を読んだばかりで、その中の「森の奥」という話が、樹海で男二人が
サバイバルしていく話だったので、てっきりこれの映画化
かと思っていたら、違った。
設定と流れは同じだけどモチーフというか、切り取り方が違う。
ユカリーヌ

ユカリーヌ