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高地戦のGTのネタバレレビュー・内容・結末

高地戦(2011年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

朝鮮戦争をテーマにした映画。
息もつかせぬ、怒涛の展開だ。戦闘シーンの緊張感は勿論のこと、人間ドラマ部分がとにかく素晴らしい。一番若い兵士が撃たれそれを囮にしてまで敵の狙撃手を探し爆撃命令を出したにも関わらず狙撃手を倒す事ができない、浦項から撤退する時船の人数に限りがあり乗ろうとする兵士を撃ち殺してまで自分たちを脱出させようとするなど、残酷な展開が目白押しだ。辛い事ばかり経験したスヒョクは、ウンピョが知っていた頃の彼とは別人のようになってしまい、戦争で手の無くなった子供を嘲笑うなど冷酷な性格に変貌してしまっているし、味方を撃ち殺したイリョン大尉はモルヒネ漬けの生活を送っている。
スヒョクは狙撃手の「二秒」に撃ち殺されてしまう。その時のセリフはとても印象的だ。「時々、俺はもうとっくに死んでいるんじゃないかと思うときがある。地獄行きが確定しているのに、今がそれ以上に地獄だから、こうして死なないでいるんだ」この映画の面白さは、こうした台詞や演技の巧みさによるものだ。
この映画は最後まで中身たっぷりだ。停戦、と思いきや停戦は12時間後。それまでに高地を奪え返せという無茶苦茶な命令。霧がかかる中対峙する両軍が、声を合わせて歌を歌うシーンは誰もが涙することだろう。結局この戦いで、登場人物のほとんどが死んでしまう。人民軍の隊長と、南北軍唯一の連絡場だった洞窟で酒を飲み交わすハギュン。そしてラジオから流れる「停戦」。爆笑する二人。上の命令一つで、殺し合うか殺し合わないかが決定するという滑稽さ。
確かに、エンタメとしてはとても面白い。だがあえて悪く言ってしまえば、「朝鮮戦争をネタにして面白い映画を撮った」とも言えてしまう。ハネケは「ファニゲーム」で、暴力がエンタメとして消費されてしまうことを非難している。これは全ての戦争映画に通じる非難だろうし、何もここで言うことではないが。
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