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桃さんのしあわせのgenarowlandsのレビュー・感想・評価

桃さんのしあわせ(2011年製作の映画)
4.2
心温まる誠実な作品。慈愛に満ちた世界に涙が止まらない。
長年、住み込みで働いてきた家政婦の桃さんが病で倒れた。家族たちは桃さんを慕い、桃さんが自分たちにしてきてくれたように、心を尽くす。桃さんと家族との交流を通して、誰にでも訪れる老いと死への向き合い方を丁寧に描いている。

桃さん(ディニー・イップ)のお人柄がにじみ出る温かいエピソードが連なっていた。これは実話なんだろうと思った(実話でした)。小さな何気ないことがその人を思い出させる。

アメリカに移住した家族だが、独身のロジャー(アンディ・ラウ)は、仕事柄、香港の実家に時々帰ってくる。好物の蒸し魚を作って待っていてくれる桃さん。部屋にはいつも暖かい明かりが灯っていた。

人前でも決して家政婦だったとは言わない。義母と呼ぶ。二人はまるで恋人同士のようだ。

老人ホームはリアルな描写だった。死を前にした人々の日常を、おそらく一般の方も登場し、面会の時以外の素顔の老人たちを映し出している。だから、家族に棄てられたとか等のお涙頂戴的な悲哀を強調していない。死を受け入れようと準備している老人たちの静かな姿だった。

ロジャーがどれだけ桃さんに愛されていたかがわかるエピソードが好き。ロジャーの悪友たちが集まり、電話口で子どもの頃のように替え歌を老人ホームの桃さんに歌うシーンがある。桃さんは声だけで一人ずつ当てていく。その前に冷凍庫にあった桃さんの美味しい料理をみんなで食らいついていて、最後の一切れをロジャーが誰にもやるもんかとパクっと食べてしまう。桃さんの前ではみんな安心して子どもになれる。甘えられる。

等々、ああこういう場面が一つ一つが思い出の再生なんだなと思って涙が溢れた。

桃さんが慈しんだ人々もまた愛を心に育てていた。仕えた家族だけでなく、老人ホームの人々も。謙虚な桃さんのさりげない心遣いや寛容で、愛を育んでいた。

心洗われました。感謝です。


(アンディ・ラウがタイプ過ぎる😍)
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