宇尾地米人

アメリカン・ガンの宇尾地米人のレビュー・感想・評価

アメリカン・ガン(2002年製作の映画)
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 その題名の通り、アメリカの銃社会、銃問題をテーマにしています。これはジェームズ・コバーンの遺作となった映画です。ジェームズ・コバーンといえば、次元大介のモデルになった俳優ですね。小林清志ですね。そんな彼の最後の映画が、銃の映画で、親父のドラマ。なにかもう、定められているようなものを感じますね。この人は西部劇、戦争、アクションものへの出演を中心に厚い風貌と泰然たる男気から人気を博したタフガイ・スター。ブルース・リーから武術の指導も受けていたんですね。そういった神経や能力を活かして映画やテレビで颯爽と活躍してきました。この映画が公開された2002年の11月に74歳で亡くなりました。『アメリカン・ガン』はコバーンの演技も見事なもので、アメリカの映画評論家やライターたちを唸らせました。そういう意味で、これは彼の遺作だからというだけでなく、コバーンのファンだという方も、そうでもない方も、見過ごしてほしくない重要なアメリカ映画です。

 舞台となるのはバーモントの田舎町。ここに暮らしている老夫婦がいて、おじいさんがコバーン。おばあさんがバーバラ・ベインです。そこへヴァージニア・マドセン演じる一人娘が帰省してきます。孫娘の家出とか、込み入った事情があるものの、親子仲は良かったんですね。ところが娘は夜出かけた後、銃撃事件で亡くなってしまった。老夫婦はあまりにもショックで悲しくて悲しくてつらいんです。おじいさんは亡くなった娘へ手紙を書き溜め、そのメッセージを読み上げていきます。おじいさんは考えて考え込んで、母の死を知らない孫娘を捜し出し、娘を死なせた357マグナム銃の製造番号から、何処から誰の手に渡っていったのかを探っていく旅に出るという、そういう話です。

 ある拳銃についての話であり、家族の話であり、悲痛な体験を経てきた男の話なんですね。銃で人を殺すのは簡単だ、瞬きするより簡単だぞ、という言葉もありました。おじいさんは娘を喪ってから、ある理由から手紙を書き続け、娘を死なせた銃がどこの工場で作られたもので、どこの店で売られたもので、だれが手にして撃たれたものか。最後は誰の手に渡ったのかをハッキリさせるために、頑張って歩き始めます。これ以上詳しくは申せません。この銃はどうなったか。この事件を経て、家族はどうなっていくか。小品ではありますが、手塩にかけたヒューマンドラマです。これが俳優ジェームズ・コバーン最後の映画ということで、感慨深い一作です。
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