デニロ

おんなの渦と淵と流れのデニロのネタバレレビュー・内容・結末

おんなの渦と淵と流れ(1964年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

戦時中の虚無故か、硬派を通し結婚するまで女の肌どころかキスすら経験のない男仲谷昇。新妻稲野和子を迎え初夜となるのだが、その過程がよくわからない。妻に誘われたように感じたりもするのだが、いや、経験がないので全くわからないのだ。という妻に関する疑念が、妻との生活の中で徐々に膨らんでくる。妻は徐々に変わっているのだ。

女学生時代に寄宿していた家の主である母の兄弟に、お前は不思議な雰囲気を持っている云々、といわれ幾度も犯され、遂には性の歓びを得てしまう稲野和子。近所からは貞淑な妻の如く評されてはいるが、独立心、独占欲が強く、それを隠し切れない。飲食の商売を始めるや彼女目当てに男が群がる。仲谷昇を愛してはいるのだが、性の歓びは満たされず、誘われるままに男に身を委ねてしまう。が、仲谷昇をも独占してはおきたい。バレやしないか、いや、バレても彼はわたしから離れられない。

仲谷昇は彼女の不行状を疑い不貞を選択し彼女の満たされぬ欲求を楽しみ、更に、確実な証拠を得るために陰湿な行動をとる。うふふ。このあたりの仲谷昇の演技は迫真に満ちています。

時折写される幼魚なのか糸ミミズと同様にもはや何を描きたいのかもわからぬほどに官能のぬめりが全面展開していく。ふたりの加虐被虐の相互関係で官能は昂まり、わたしの官能も渦巻いてきます。もはや「みいら採り猟奇譚」の世界。ふたりの行く果てが見えてきます。

ラスト。稲野和子は青酸カリを用い自裁して果てるのだが、その不明の彼女の意図はさておき、青酸カリの利用はかなりの悶絶をもたらすようで、かつて映画『点と線』で青酸カリ自殺をした高峰三枝子は、着物の裾が乱れぬように足首を縛って服毒したものだ。さて、稲野和子のように安らかな自死をみることなど出来やしません。

シネマヴェーラ渋谷 才気と洒脱 中平康の世界 にて
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