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バイオレンス・レイクのEikeのレビュー・感想・評価

バイオレンス・レイク(2008年製作の映画)
3.4
とにかく「嫌な映画」ですが本作はアメリカ映画ではなくイギリス映画。
2008年と一昔前の作品になりますがアメリカンニューシネマの波が途切れて以降、ジャンル系の活きのいい映画は「本場」のアメリカよりもヨーロッパ産に見るべき作品が多い気がします。
その特徴としては最近のアメリカ映画のようにスタイルを優先するのではなく、依然として物語や展開が「甘っちょろくない」こと。
その点は本作も然り、ですから了解の上でご覧になることをお勧めします。

ジェニーとスティーブは週末を利用してロンドンを離れ郊外でロマンチックな旅行に出発。
建設中の森林型リゾート、「エデンレイク」の敷地にRV車で乗り込んだ二人は美しい湖畔で幸せなひと時を過ごします。
ですが、その平穏はやってきた地元のティーンエイジャー達の傍若無人な行動によって破られます。
スティーブの注意に逆切れした子供たちの悪ふざけは次第に暴力的な展開に。
ジェニーたちは過激な行動に出る「子供たち」を前になす術もなかったのですが思いがけず「命がけ」の局面に放り込まれることに…。

本作の場合お話の展開に特に目新しさがあるわけではなく、暴力シーンもとりたてて過激なものではありません。
それでいてこの手のジャンル作を語るうえで今も良くピックアップされる作品であります。
それくらい印象に残る作品であるとは言えるのではないでしょうか。
悲惨な目に合うスティーブを演じるのは今や人気俳優であるマイケル・ファスベンダーだった訳ですが2008年以前は主にTVで活躍していたということで本作は正に映画に進出し始めたころの作品らしいです。

本作で異色なのはカップルを「襲う」子供たちが米映画に良く出てくるような「いかにも」ギャングっぽい不良などではなく、見かけがごく普通であることや、ボス的存在の少年の圧力が集団心理に作用した結果、過激な行動に歯止めがかからなくなる模様が異様にリアルに描かれている点。
映画的には苦境に陥ったヒロイン、ジェニーの命がけの反撃が物語の中心になっておりますが、それもあくまで現実的な範囲内での展開で爽快なものにはなっておりませんのでご注意を。

「暴力は常に不快なものである」という視点が全編を貫いており、全くカタルシスを得られない珍しい作品になっております。
それでも正直言えばこのラストは「幾ら何でも…」と思わざるを得ないのですが、それでもドラマとして人の持つ「負」の部分に引きつけられるものがある点が「暴力」の不思議なところですね。
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