Eike

ショーン・オブ・ザ・デッドのEikeのレビュー・感想・評価

4.0
何よりホラー映画への「愛」を感じさせてくれる快作。

初めて見た際には「アメリカ映画的な非アメリカ映画」の代表的な成功例とも感じました。
そんな本作ですが、何となくゾンビをパロディにして作られたコメディ&ホラーとして語られる事が多い気がしますが、実は最近では珍しくなったシチュエーションコメディとしても上出来であります。

”ゾンビ”というのはギャグのねたにしやすい素材だとは思うのですが、意外にも本作ではほとんどゾンビそのものをパロディにしてはおりません。
ゾンビはあくまでゾンビであり、その存在理由は基本に忠実であり、生者を襲って食うという大原則をきっちりと守っております。
あくまで笑いを生み出すのはそんなゾンビたちから逃げ惑うボンクラなショーン達の言動なのです。
これはゾンビ映画の伝統への敬意と愛着がなければ書けない脚本でしょう。
ですから当然のように、グロいスプラッター描写も出てまいります。

物語の運びのテンポなどには間違いなくアメリカ映画のエンタティメントのノウハウが生かされていますが、ディテールや人物描写などにはヨーロッパ映画調の強いこだわりが感じられます。
オープニングタイトルのシークェンスから現代社会の人々の暮らしが一見すると「生ける死者」にも見て取れる辺りの社会批評の隠し味もロメロ監督のオリジナルに対するリスペクトをきちんと感じさせて好感が湧きます。
その上でショーン(S・ペグ)とエド(ニック・フロスト)の友情を描いたドラマとしてもちゃんと成立していて感情移入できる作品になっています。
ロメロ監督も本作を見て大いに気に入ったそうで、サイモン・ペグ、エドガー・ライトの両氏にとっては正に本望といった所でしょうね。
ところで、本作の制作時にペグ氏の元にはニール・マーシャル監督のDog Soldiersへの出演依頼が来ていたそうです。
結局、本作を選んだということで狼男ではなくゾンビを選んだ形となった訳ですね。
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