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アルターフ -復讐の名のもとに-のくりふのレビュー・感想・評価

3.5
【愛するか憎むか、よく考えて撃ちなさい】

カシミール紛争を舞台とした、2000年のボリウッドLOVE & HATEアクション。

過激派によるテロの余波で息子を失くした夫婦(サンジャイ・ダット×ソーナーリー・クルカルニー)が、両親を失くした少年(後のリティク・ローシャン)を引き取るが、彼の親を殺したのが実は…。

そして物語は、「ミッション:カシミール」(原題)と呼ばれる計画を巡り、警察対テロ組織による戦争へとなだれ込む。

カシミール紛争知らずだからピンと来ないんだろうな…と感じる点はやっぱりありました。が、怒涛のナヴァ・ラサで引き込まれた冒頭なのに、進むにつれ冷めてしまいました。

大きくは、警察もテロリストもやることにツッコミどころ満載なのと、リティクとヒロイン、プリティー・ズィンターのラブが何だか盛り上がらないせい、と思いました。

タヌキ顔美人のプリティーさん、可愛らしいしダンスの見せ場も華やかですが、どうも私には小娘に映ります。テロリストとの禁断の愛に走るか否か、という場に至ってもおんなの情念、あんまし醸されません。サンジャイ夫婦とリティクの確執が強烈なので、余計に薄く見えてしまいますね。

リティクはデビュー3作目だそうですね。マッチョな身体に繊細な顔が乗り、苛められっ子が通販でブルワーカー買って鍛えました的面白さがあるのですが、やっぱりサンジャイ・ダットの濃さにはまだ足りない。

自分らで仕掛けたテロが誤爆し大切な人を失う、という号泣シーンがありますが、あったりまえだろ!とただツッコミたくなります。彼の演技に凄みがあったら多分、共感してしまうと思うんですが。

本作、まずはサンジャイ・ダットの強烈な目ヂカラから物語が始まります。で、彼の狂気から絶望まで、その多彩な表情と演技を堪能するという、サンジャイ萌え映画としての魅力が最大なんです(笑)。

が、それじゃ胸焼け確実ですから、妻役ソーナーリー・クルカルニーさんの、どこまでも暖かに包み込む母性が、それを中和してくれるという親切設計ですね。

ロケには、見惚れますね。そしてカシミールの風光明媚がテロで汚されていく過程には心痛むのですが、「ミッション:カシミール」の実態そのものがねえ…。え?それで終わり!?と拍子抜け。

いやもちろん、カシミール紛争的には大変なテロ行為なのでしょうが、3時間近く引っ張るような難儀なプランじゃないでしょう。かなり残念でした。

本作の原動力、まずは狂気でしょうね。息子を奪われたサンジャイの役なんて公私混同し過ぎで人殺し過ぎ(苦笑)。難儀な事情なのに子供を引き取る彼の妻にも、補完せずにはいられぬ愛の狂気を感じます。

そして愛と憎しみは紙一重。美しき地を破壊するテロという行為に、このドラマが嵌ってしまう哀しみはなかなかよく出ていると思いました。

<2014.3.9記>
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