拘泥

プロジェクト・グリズリーの拘泥のネタバレレビュー・内容・結末

プロジェクト・グリズリー(1996年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

もちろん失望がない、といえば嘘になる。
山中でのクマ、またの名を"オヤジ"との邂逅以来、取り憑かれたようにタイマンでクマと闘り合うデカイ夢をブレずに追う風狂の男。7年と15万ドル(字幕では150万ドルと書いてあったが150kと言っていたので多分誤訳。)をかけて作り上げた防護スーツThe Ursus Mark VI。
その製作過程の凄まじさたるや、12mの高さから落とす丸太、3トントラックの突進、崖からのスリップ、リアリストの父が勧めたとかいうバットのリンチ、散弾銃から弓矢まで持ち出してクマが矢を打つんですか?とか言われてまで行われる耐久テストには大学入ってからクラスメイトと交わした会話での笑いの総量の5億倍ぐらいは笑った。
笑っていたと同時にこいつらはなんて凄いんだと思わずにいられなかった。
世間からつまはじきにされるような"金にならないくだらない"夢。一度のクマとの邂逅が彼の何を変えたのか私には到底想像もつかないが、パンピーには想像もつかない動機で自分の人生を選び取る強迫的なまでの情熱、その責を負う覚悟。(或いは単に強迫だろうが)
この人達は何と素晴らしい生き方をするのだろう。とここまでバカ笑いしながらここまで思うなんて体験はそう出来るものではない。
そしてロッキー山脈の実地実験にてスーツの柔軟性という映画の最序盤から明らかだった弱点のシグニフィカンスに気づき、スーツを山頂にまさかの放棄笑。果ての熊との遭遇。スーツがないので戦えず、山頂に佇むスーツのカットで終了…
いや、何やってんだよアホ過ぎるだろ笑
それでいて切な過ぎるだろ!!熱い魂とアホ達のアホな夢、そんなアホな夢の世界でさえシビアな現実…
クマとのアホだけど本気のバトルを見たかった、まさかそれも無く終わるとは、失望がない、といえば嘘になる。でも俺は、お前は良くやっているよ…!と一言、たとえお世辞でも!言ってやりたいと思う!そりゃタランティーノが絶賛するわけだこんなん好きすぎてしょうがねえだろあの人ってなすんばらしい映画である。
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