セガール幹事長代理

キャタピラーのセガール幹事長代理のレビュー・感想・評価

キャタピラー(2010年製作の映画)
1.5
戦場で四肢と聴力と声帯を失った夫と、そんな夫に愛と虐待を与える妻の物語。

設定は江戸川乱歩の「芋虫」まんまだが、「芋虫」は無力な夫に対する加虐的な性癖の歓びと懺悔の間に揺れる妻を描くフェチ作品なのに対し、本作は反戦・反日色強めの分かりやすいテーマという印象だ。
どちらが良いとも言えないが、下心全開で映画の方の鑑賞を始めると「こういうの観たいんじゃない」という感覚に陥る。
戦地で強姦を繰り返していたDV夫VS妻(その他戦争に巻き込まれた女達)という因果応報的構図が全面的に押し出されていて、ゲテモノ設定で売り出している割には、蓋を開けてみたら悪い意味で優等生的な作品に仕上がってしまい正直あまり面白くはない。

それにしても(従軍中強姦してた云々はおいといて)ろくに動けないのに三大欲求だけは健在なのは同じ男性としてやはりキツいものがある。
脳性麻痺だけど風俗に行きたすぎて車椅子でも受付OKのラブホを調べて発信している人と話したことがあるんだけど、本作を鑑賞して、自由な生き方とテクノロジーの発達に起因する人間の選択肢と活力の偉大さを改めて感じた。私は世界中の人間が一人残らず死滅しても自分だけは生き残りたいタイプの人間なので、皮肉なことに鼓舞されてしまったこともまた事実。

妻役の演技がもてはやされているが、四肢を失ってもなお失われない性欲と文字通り芋虫同然の身体とのギャップに苦しみ涙する夫の表情は胸にくるものがあった。
胸にきてもなお、映画は面白くなかった。なにこれって感じでした。