爆裂BOX

ブラッディ/ドクター・ローレンスの悲劇の爆裂BOXのレビュー・感想・評価

3.1
パーティーの最中、二組のカップルがレースを行うが濃霧のため道に迷ってしまいガス欠になる。ダフネは人を探してドクター・ローレンスの屋敷を訪れるが、そこには怪物がいて…というストーリー。
ピーター・カッシング出演のホラーです。撮影監督出身で、かつてハマーでホラーを監督したフレディ・フランシスが監督を務めており、息子のケヴィンが設立したタイバーン・プロの二作目の作品です。
ローレンスから濃霧のため屋敷に泊まっていくように言われたダフネは何者かによって惨殺され、燃料探していたビリーも車に戻っていた所を車ごと崖下に突き落とされる。ビリーの遺体が発見され、消息不明のダフネを心配して探す一緒にレースしていたジョフリーとアンジェラはローレンスの屋敷に辿り着くが…という内容です。
製作陣もハマーお馴染みの顔触れがそろってるからか、怪奇映画ムード漂う作品になっています。そのためテンポ的にはゆったり目になっていますね。作品全体に漂う雰囲気はいい感じでした。
ただ、主人公と呼べる人物がいないので誰に感情移入していいかわからない所ありますね。カッシング演じるドクター・ローレンスが主人公かと思いきやそういうわけでもないですし、怪物は彼の息子ですが、屋敷を訪れた人を引き留めたり、怪物の存在隠そうとしたり殺人に協力する狂人かと思いきや、犠牲者が出た時は酷く取り乱したりして息子の凶行に心痛める善良な人なのかイマイチわかり辛いですね。ヴェロニカ・カールソン演じるダフネが前半はヒロインのような感じで進みますが、呆気なく殺されて、彼女を探しに来たジョフリーとアンジェラが後半は主人公っぽくなりますが、結局あんまり活躍しなかった人が最後まで残った感じか。
それでもやはりピーター・カッシングの存在感と名演技は今作の一番の見所といえるでしょう。バイオリンを奏でるシーンもあります。映画の中で亡くなった奥さんとして出る写真は実際のカッシングの亡くなった奥さんの写真なんですね。
「エレファント・マン」や「エイリアン」でチェストバスターが飛び出る人を演じた名優ジョン・ハートが女でも平気で殴りつける粗暴な庭師トムを好演してます。ビリー車ごと崖下に突き落として大笑いしたり、ジョフリーを沼地に誘い込んで嵌って沈んでいく所見て笑う所のサイコパス感もいい感じでした。直後に自分もハマって一転して「助けて下さい~」と助け懇願する小物感も良かった。主人公と思われた人が次々死んでいく中で結局この人が一番登場時間長かったな。ハート演じる凶暴な庭師やカーリーを崇拝するインド人家政婦などクセのある登場人物多いですね。上手く活かせてるとはいいがたいけど。
「サンゲリア」のイアン・マッカロックがジョフリー役で出演しています。まだ髪フサフサ(笑)
時代的な物もあってゴア描写と呼べるものはないですが(殺害シーンも直接的な描写ほぼないです)、イアン・マッカロックが顔にナイフ突き立てられて階段転がり落ちる所が一番流血度高いかな。
ラストに登場するローレンスの息子はジャケットにもちょっと出ていますが、インドの僧侶の服装した坊主のオッサンでインパクトも不気味さもなかったな。どうやら人肉食うようだけど、その描写は無いです。登場したと思ったらアッサリ退場しましたね。
ラスト、アンジェラが発狂しながら走ってる所はほんのちょとだけ「悪魔のいけにえ」っぽかったな。結局何故息子があんな怪物になったのかは語られずに終わりましたね。インドで生活してた時に何かあったようだけど。
話的には投げっぱなしで穴がありますし、展開も盛り上がりに欠けて地味ですが、カッシングとハートの演技はそれだけでも見応えあると言える作品でした。