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フランスが舞台でフランス人俳優が出演するフランス映画だ。
だが、監督はフィンランドのアキ・カウリスマキである。
この監督の作品は以前観た事がある。
とても静かな映画で、物語が佳境に入るまで少々難儀をした記憶がある。
この作品もそうだった。
非常に眠かったのだ。
前半部分は実に心地よい眠りへと私をいざなってくれたのである。
何この映画!
トゥルースリーパーなん?
計48回、巻き戻して観賞した次第である。
悪口に聞こえるかも知れないが、決してそうではない。
とても、いい映画だったと言える。
私にとってこれはよくある事なのである。
特に晩ご飯の後などは危険なのだ。
ミニシアター系とか渋いヨーロッパ映画などは、ご飯前に観賞するよう心がけていく所存である。
この物語の主人公は靴磨きを生業としているマルセルという初老の男である。
彼の妻が重篤な病いで入院してしまうのだが、それと同時にアフリカからの難民の少年をかくまう事になってしまう。
そして、その少年をロンドンにいる母親の元へ送り届けるためにマルセルが奔走する、という物語である。
この作品、巷でよく言われる”ツッコミ所満載”の映画だ。
しかし、私は特典映像で監督の意図を知っってしまった。
もし、特典映像を観ていなければ、訳知り顔であれこれツッコンでしまっていたであろう。
危ない危ない・・・
そう、コンテナで発見された難民たちが小綺麗なのも、川に潜んでいた少年が全く濡れていなかったのも、全て意図的な演出らしいのだ。
私が全く気付かなかった監督の意図をここで偉そうに披露するのもどうかと思うので止めておくが、そうなると他の場面も気になってくる。
そういう目で観れば、映画の文法や方程式から微妙に外れた表現が確かに散見される。
それらも多分わざとなのだ。
普段映画を観る時、あまり穿った見方はしないのだが、たまにはそういう目で観た方が良いのかもしれない。
さもないと、恥ずかしいツッコミを入れてしまう事になってしまうからだ。
物語自体は非常にシンプルで分かりやすい。
そして、ハッピーエンドである。
そこは安心して観ていただけるだろう。
オープニングクレジットで”ライカ”という出演者が堂々単独表記されている。
君、誰やねん・・・
実はこれはマルセルの愛犬である。
彼の自然な演技にも注目していただきたい。