菩薩

最後の人の菩薩のレビュー・感想・評価

最後の人(1924年製作の映画)
3.8
どんな仕事であれ一生懸命に取り組んでいれば、周りがとやかく言おうと対して気にはならないのであろうが、その老人にとっての金モールの制服は制服以上の価値があるものであり、彼の人生、彼の権威そのものである。それを剥ぎ取られてしまったら、彼の手元には何も残らない、何も残らない彼を、周囲の人間が嘲笑う。いつかそんな日が来るのは分かっていたであろうが、その日が来るのが突然過ぎた、心も身体もなんの準備も無く丸肌にされてしまったら、流石に誰でも打ちのめされる。せめて娘の結婚式だけは、そんな思いで起こした愚行が更に彼を追い詰める、彼を待つのはただ、孤独なだけの絶望でしかないが…。そんな悲劇を脚本家の善意が救う、現実ではまず起こり得ないであろう起死回生のラスト、それをどう取るかは人それぞれであろうが、こうして一人の人間を絶望から救い出し、希望の欠片を映し出すのも映画としての役割の一つであろうと、個人的には好意的に受け取れる。まぁとは言え随分と豪勢にやってくれちゃってんなぁ、とは思うわけだが…。質素倹約、慎ましく、慎ましく生きていこうではありませんか…。
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