ENDO

救命艇のENDOのレビュー・感想・評価

救命艇(1944年製作の映画)
4.0
Uボートの砲撃から辛くも生き延びた旅客船の生存者が階級や性別を超えて徐々に壊れかけた救命艇に集合していく密室劇。主役のタルーラの才色兼備で冷徹なジャーナリストの魅力。死にかけの男への接吻があまりに淫靡。極限状態で最も粗野な人物に惹かれてしまう。超人と称されるドイツ人捕虜は医師として壊疽した脚の切断を執刀するも貴重な水を盗み飲んでいる所を患者に目撃され朦朧とした状態の彼を海に突き落とす。命を弄ぶ彼はまさに船上の神。揺蕩う波のように人間の心情は不安定。最期まで互いを信頼できない戦時下の哀しみ。平時でも人間同士の齟齬が剥き出しになってしまった現在それは普遍性を持つ。
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