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ルートヴィヒ 完全復元版のtheocatsのレビュー・感想・評価

ルートヴィヒ 完全復元版(1972年製作の映画)
3.0
4時間⇒1.3倍速3時間でも忍耐の限界超越

一般的エンターテイメント作品のようなサービス精神は皆無。ヴィスコンティ映画にある程度慣れている者でも視聴継続は難渋の極み。しかし映画史に残る金字塔の一つなのは間違いない。だからといって必見と言えるかは・・・・



バイエルン国王ルートヴィッヒが王位に就いてから失脚するまでの年月を描いた長い長い叙事劇。
個人的には音楽史的にワーグナーとのエピソードが眼目点でもあったが、それはほんの一部のこと。

従妹姉妹の姉への愛が叶わず妹と婚約を交わすも一方的に破棄。
実の弟親王は戦傷後遺症で狂人化。
自身は城に引きこもり美男子従卒取り巻きと遊興にふける日々。ついに政府重臣による国王降ろしが動き出す。

大まかにいえば上の流れが延々4時間かけてこれ以上なく重厚に歓楽的要素なきまま描かれる。
史実を知る一助となったという点では感謝に堪えないが、感情が全く動かない状態のまま知的好奇心のみでは1.3倍速3時間でも忍耐の極みを超越していた。
座ったままではフッと意識を失うこと数度。ストレッチ立ち見状態でようやくエンドロールとなった時は心からホッとしましたね。
通常であれば長尺物を見終わった時はカタルシス(浄化感)が得られる場合が多いものですが、本作に関してはただ解放感あるのみ。

一つ興を削いだのがドイツ語ではなくイタリア語アフレコを字幕鑑賞したこと。ドイツ語字幕で見たかったですが、もう一度はさすがにご免ですね笑

映画ファン必見と言えるかは分かりませんが、歓楽要素などない重厚長大な史実再構築という映画形態の重要な具現化作品として見ておいて損はないと思います。
一般的エンターテイメント映画がいかに歓楽的な欺瞞虚飾にまみれているか深くかみしめることになるでしょう。

012006
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