ゆべし

私は彼女をよく知っていたのゆべしのレビュー・感想・評価

私は彼女をよく知っていた(1965年製作の映画)
4.5
英題: I Knew Her Well
日本ではあまり知名度がなく自分も知らなかったが、クライテリオンでリマスター再発されており興味を持った。軽めのコメディかと思いきや、社会風刺的なフェリーニ作品と、断絶や空虚感を描くアントニオーニ作品との中間的テーマを持つ印象で、大変な傑作だった。
主人公アドリアーナは田舎町の美容院に勤めて実家の両親は農夫、絵に書いたような田舎娘だが、若くてとても美しい。映画は女優の夢を抱くアドリアーナがローマに出てきて過ごす毎日を追い、直線的なストーリーは無い。パーティ三昧の日々を送ったり知り合った俳優にグルーピー扱いされたり等、様々な出会いと会話のエピソードの積み重ねで構成されている。
まさにフェリーニ「甘い生活」と同時代の同じ背景舞台なのだが、特筆すべきはこちらは「女優志望の無名の女性」視点、「甘い生活」は業界に地位もコネもある男性ジャーナリスト視点で同時代ローマのセレブな退廃的日常を描いている事。アドリアーナは彼女なりにナイトライフを楽しむが、権力ある男性には欲望のはけ口、インタビューを受けて得意になるが実は嘲笑の対象だったり、セレブ界カーストの底辺。同年代で性格の良い男性との出会いもあるけど、彼らにとって上昇志向の強いアドリアーナは逆に高嶺の花。
彼女は空虚感を感じながらもパーティ三昧の生活を続けるが。。。という話。
エイドリアーナは明らかに男性中心社会と商業メディアに消費される被害者として描かれており、これはフェミニスト映画と呼んでも差し支えないと思う。今後「甘い生活」の脇役女性たちを観るとアドリアーナを思い出してしまいそう
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