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神聖なる一族24人の娘たちのSのレビュー・感想・評価

神聖なる一族24人の娘たち(2012年製作の映画)
3.7
「ミッドサマーより怖くて可笑しみに溢れてるのでは?」
それはこの映画に“外の人からの視点”という“突っ込み”がいないから。え、変だって思うの、わたしだけ?ってなる怖さと笑いが滲んでくる。
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ロシア連邦 マリ・エル共和国。
自然と共に生きる、マリの人々の生活に根付いた土着信仰からひも解く、生と性。
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眠たくなるけど興味深い、という言葉に尽きる。

●ほんとうのおとぎ話
“森の精に夫を狙われた女の顛末”など、おとぎ話を含んだ様々なタイプのフィクションで構成された、24人のマリ人女性のオムニバス映画。
でも、幻想的なお話も100%嘘じゃなくて、何百年もの間マリで語り継がれた言い伝えが基になっているのかなと想像できるし、様々な戒めを含んでいそう…。
おとぎ話って子供の頃から親しんでいるのに、話は奇妙で怖いし、意味不明、延々とそういう白昼夢が続く感じ。何の説明もない。
しかもロシア連邦の謎の国・マリのお話しなんだから、あらゆる場面で「もしかして本当の部分もあるのかも?」と思っちゃう。マリの人も「日本ならかぐや姫とかマジであるかも?」って思うやつだと思う。お互い知らなすぎるのよ。

●神聖であるのに身近な“自然”と“死”
“樫の下でふしだらなことをして呪われた少女の話”では、呪いを解くために森の中で自然神への供犠が行われたり、“死んだ父が蘇えり家に戻って来る”お盆のような日を描いたエピソードもあった。
敬うべき神聖なものや別世界が、踏み込んではならないほど尊いものであると同時に、めちゃくちゃ密接に“生”や“性”“生活”と共生しているのが面白かった。“「谷に棲む悪魔に襲われた!」って言って夜の営みが燃える”とか、色々身近。

●とんまつり気分でみるとよい
土着の儀式やまじないってどんな世界でも、日本でも、神々しいんだけど、素朴というか色々“むきだし”すぎて、リスペクトしながらも笑っちゃう。ミッドサマーと同じく、みうらじゅん的な、とんまつり的な視点でみると面白い。

●おおらかな性のなかで搾取され続ける女性
厩舎の干し草のうえや草原の中…そこかしこの生活の中に“性”が息づいている。しかも“結婚”も“まじない”(仕組まれたまじないであっても)によってきまったり、女は強いけど立場は弱く、男に搾取され続けている現実。

●世界を、世代を超えてわかりあえるもの
“どこかへ嫁いだ恋人との初体験を詩にした男”の切なさと痛み、
“初潮を街中に知らしめる儀式を恥じる少女の話”なんて、全世界共通だと思った。自分が女として見られることの恥ずかしさ、「なんでわざわざ赤飯だすんだよ」的なあの感覚…。劇中の「女の運命に立ち向かうためよ」の言葉がデカいなと思った。
痛くてむずがゆい感じは全世界共通。

●とにかくミッドサマー、なのにインドやアラビアっぽい気配もする音楽
フォークロア的なムードや、怖さも感じるほどの、謎の、そして純粋な土着信仰。飲むとトランスしちゃう発酵した飲み物(キセリだけど)もやっぱり出てきて興味深い。
でも、音楽はインドとかアラブっぽい雰囲気も漂っていて、色んな文化が入り混じってるエリアなのかな?
エンディングで急にEDMというか謎ダンスミュージックになったのも笑った。別世界から現実に戻ってきたようで、逆に余計異次元にぶっとぶ感じ。
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