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ハサミを持って突っ走るのSPNminacoのレビュー・感想・評価

ハサミを持って突っ走る(2006年製作の映画)
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夫婦仲が破綻し精神不安定な母と息子オーガスティン。13歳になった彼は愛する母と引き離され、どういう訳か精神分析医とその奇妙な家族の下に預けられてしまう。
そこには不遜な家長ブライアン・コックス、家政婦同然な妻ジル・クレイバーグ、クレイジーな娘グウィネス・パルトロウとエヴァン・レイチェル・ウッド、養子の兄ジョセフ・ファインズ。両親に育児放棄されたオーガスティンだけでなく、みな愛する人に見捨てられた者ばかり。疑似家族といってもあまりにカオスで、カオスすぎて感覚が麻痺してる状態。
心を病んだ彼らに必要な治療とは、そしてオーガスティンにできることは…そりゃもう、逃げるしかないよね。とはいえ、それが一番難しい。とりあえず、いざという時の蓄えは大事。それと、家の中は片付けよう。
オーガステン・バロウズの自伝的小説を原作に、70年代の家父長制、疑似家族、ポップ音楽、ゲイ、抑圧と解放を描いたライアン・マーフィーお得意のキャンプで風変わりな群像劇。ブロードウェイ人脈からクリスティン・チェノウィスやパトリック・ウィルソンも。
「特別な有名人になりたい」現実逃避の女、不幸だけどミューズ的魅力もある母親アネット・ベニングが物語の中心として盤石の存在だ。主演ジョセフ・クロスが13〜15歳には見えないけど、そこは子役にはさせられない場面があるので敢えてだろう。いくらポップに演出されても笑えないエピソードばかりだ。大人は子供に容赦なく困難を課し、残酷に傷つける。けれど、「ハサミを持って突っ走る」ような危うく脆い人たちに向ける少年の眼差しは優しい。
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