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ファルコン・レイクのSPNminacoのレビュー・感想・評価

ファルコン・レイク(2022年製作の映画)
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年上少女にドキドキする少年の定番ヴァカンス映画なのに、のっけからホラーっぽくて、ファルコンレイクというよりクリスタルレイクみたいな。森と湖とコテージは薄暗く、古い映画のピンナップが貼られた部屋には臭い匂いと死の気配が漂う。そしてあたかも亡霊視点で遠くから捉えたショット。
少し大人びた16歳クロエと、14歳バスティアン。クロエの元彼や親の話す英語は、バスティアンにとってまだ理解できない大人の世界だ。それでもクロエを追って、一つずつ子どものルールを被っていく。それは小さな弟ティティがバスティアンのチップスを勝手に食べてしまうような、他愛ない悪さだった。
けど湖という通過儀礼を経ても、向こう側まで辿り着けない場合もある。血が出るまで自分の手を噛めないのは痛みが歯止めになるから。本当は幽霊も水も、大人になるのも怖いのに、みんな子ども時代のライフジャケットに守られているからこそ無茶をする。バスティアンはヘッドフォンや白いシーツに包まれて背伸びしてみせる。そんな子どもに親たちは無関心。
結局、誰にとってのホラー(怖い体験)なのか、ということかも。限界ギリギリで止めるクロエには傷つきたくないものがある、でもバスティアンはその怖さをよくわかってなかったのだから。
後味は悪いものの、それ以上にジャンル的なアプローチが不思議な映画だった。例えば同じフランス語圏のジュリア・デュクルノーほどグロテスクじゃないけど、ちょっと似た方向も感じる。監督はあのシャルロット・ルボンなのか!でもそういや短編『ジュディット・ホテル』もホラーコメディだったもんなあ。
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