『天使の復讐』で盛り上がっているなか、おれはこちら、ラリー・コーエン映画で二役を無駄に演じ、脱ぎまくっているゾーイ・ルンド（映画）を愛していく。これも土台が『めまい』か。それにしてはヒッチコックらしさが殆ど感じられないが…印象に残るのは古びたマンホールから下水の臭いが伝わってくるような生々しいNew York。
女性を殺してしまった映画監督が、その夫とそっくりな女性をキャスティングして再現映画を撮る。スナッフ要素もあり、隠しキャメラ、覗き見、フィルムで絞殺（実に映画っぽい）。商業的に失敗した映画監督がリアルとは？フィクションとは？と表現を突き詰める話でもありそうだが、そこはラリー・コーエン、真顔になりすぎることもなく、暴力とセックスと殺人の歪なドミノ倒しで呆然（ラストがハッピーエンドなのかもよく分からない）。
ゾーイ・ルンド、フェラーラからラリー・コーエン、才能豊かなヘロイン中毒。『天使の復讐』『バッド・ルーテナント』をしれーと公開するなら、これも流すべきじゃないの？それが「映画」の誠実さだと俺は思ったりもしますが。

言うことはないぐらい素晴らしいので、ゾーイ・タマリス・ルンドが37歳の若さで亡くなったことも忘れる。舞台はNY。犯人は有名な映画監督。バレバレにも関わらずせっせと自分の映画を作るボゴシアンが大胆不敵。フィルムはもはや殺しの手段。殺害、撮影、そしてまた...という展開には、もうサスペンスもめまいも忘れてよろしい。ゾーイ何度ヌードになった？こんなに美しく儚いものがあるのかとちょっと切なくなるしラストは登場人物を超えて女優そのものになる。飛び立った先に幸せがあるよう願わずにはいられない。

ボゴシアン演じる監督の住んでいるロフトの内装がサスペリア風でかっこいい。「ブラック・シーザー」でもレストランとして使ってたとこ。もちろんサスペリアほどの完成度はなく悪趣味方面だけれど作品に合っているからすごくいい。殺人を自ら演出and撮影、世間を見返してやるために狂った演出にのめり込むボゴシアン、顔がもうヤバい。ふた役ののゾー・タマリスはどちらでも全裸だし美しい。フランシス・ファーマーやドロシー・ストラットンみたいな実生活のスキャンダルで人気になってしまう女優を仕立て上げようとするボゴシアン。あと担当刑事までボゴシアンに巻き込まれてヤル気まんまんなのが最高。ラストのクレジットもバカバカしくていいなー。アンカット・ダイヤモンドにボゴシアンを起用した経緯がわかりすぎるしこのひっきりなしのシンセもあれだな。そしてクライマックスのソケットのどアップもう好きなヤツ。