三樹夫

金環蝕の三樹夫のレビュー・感想・評価

金環蝕(1975年製作の映画)
3.9
ダム建設を巡る政官財の癒着と談合と汚職。巨額のダム建設を巡り、西村晃が専務の竹田建設は池田勇人のとこの内閣官房長官仲代達矢をつてに工事受注の便宜を願う。池田勇人は先の総裁選で大量に実弾をばら撒いており金が必要だった。しかし電力開発総裁は青山組よりリベートを貰っていたため青山組に工事を決めたがっていた。まずは通産省の大臣を通じて電力開発総裁を辞職させ、後任には自分の息のかかったおっさんを据え、ここに政官財の汚職トライアングルが見事完成。あのクソみたいなくじ引きがいかに腐敗しているかを表現している。しかし何か裏があるなときな臭いものをかぎつけた金融王宇野重吉は政治記者の高橋悦史を使って真相を探らせていた。決算委員会では宇野重吉と通じる三國連太郎が追及するが、なんの救いようもない暗黒の終わり方をする約2時間半の巨編政治映画。

政治の世界が舞台ということでほぼオヤジしかでてこないオヤジホモソーシャル世界になっており、女性はセックスの為だけの存在みたいな完全にモノ化された世界になっている。しかも出てくるオヤジが誰一人として良い奴がいないという極悪オヤジワールドで、仲代達矢も悪仲代となっており、『人斬り』の時と同じく蛇みたいな冷血演技をしている。一応は悪仲代が主役でガハハオヤジ三國連太郎が助演という形だと思うが、2人とも後半になるまではほぼ出てこず、汚ったねぇつけ歯を付けた宇野重吉が事実上の主役みたいになっている。政治家のオヤジは悪いやつしか出てこないし、汚職を追求する三國連太郎も別に良い奴でもなんでもない。悦の異母弟の峰岸徹は信じられんぐらいクズと、どこをとっても碌な奴が出てこない。
警察司法は政治家の犬だし、ジャーナリズムも政治家のケツ舐めてるしで、政官財の汚職トライアングルに留まらず暗黒ペンタゴンとなっている。

オヤジ俳優が大量出演で悪いオヤジの役を演じている。西村晃なんか鼻にタバコつっこんで宴会踊りする始末。出てくるオヤジが揃いも揃って腹式呼吸の重低音のええ声。
セックスした時に波がザパーンは紋切り表現だけど、今観るとこの紋切り表現を全力でやられたら爆笑してしまう。
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