爆裂BOX

香港ゾンビの爆裂BOXのレビュー・感想・評価

香港ゾンビ(1998年製作の映画)
3.8
チンピラのモーディとビーはボスの車を運転中、突然道路に飛び出してきた男を轢いてしまう。その男はゾンビ生成薬を運ぶ化学兵器の売人だった…というストーリー。
「イップ・マン」シリーズのウィルソン・イップが初期に手掛けたゾンビ映画です。
二人は気つけにジュースと思い男にゾンビ生成薬を飲ませてしまう。トランクに男を積み込んでデパートに来た二人だが、ゾンビになった男はトランクから抜け出して警備員を襲い、ゾンビが増えていくという内容です。
コメディあり、ロマンスあり、サスペンスあり、アクションあり、お涙頂戴シーンありの香港映画らしいごった煮感覚に溢れたゾンビ映画ですが、流石はウィルソン・イップというべきか、テンポよく個性的なキャラたちで飽きさせずに盛り上げてくれてこちらの予想以上に健闘しています。
前半はチンピラ二人の日常をダル~としたコメディ感覚で描いていますが、ゾンビがデパート内に溢れてからの脱出劇は盛り上がります。やはりデパートをさまようゾンビ群はいいですねぇ~。まあ、モールではなく中野ブロードウェイみたいな所ですが。
ダメ男二人の日常を前半で描いている所は「ショーン・オブ・ザ・デッド」の影響ありそうですが、哀愁漂うボンクラだけど悪い奴じゃないショーン達と違って、こちらの主人公モーディとビッグの二人は金工面するためにヒロイン強盗したりと感情移入し辛いゴミ野郎です。サム・リー演じるビーは単なるおバカキャラかと思ったら強盗するときに「必要なら殺そう」とか言い出す凶暴な一面見せるし。一応、後半では仲間やヒロインの為に戦ったり男気見せて「ツッパってるけど根はいい奴」って描写出てくるけど。
尻軽感溢れるヒロインや彼女に恋する寿司屋、いつもエラそうな口きくけど口先だけな嫌われ者とセクシーなその妻など皆キャラは立ってますね。途中出てくる犠牲者要員の警官二人の片割れがかまいたちの山内そっくりでしたね。
中国のゾンビというとキョンシー真っ先に思い浮かべますが、本作のゾンビはロメロタイプのノロノロゾンビですが、生前の記憶は残ってるのか、寿司屋はゾンビになった後、「デイ・オブザ・デッド」のベジタリアンゾンビみたいに恋してたヒロイン守ろうとしますし、警備員ゾンビはシャッター閉めて主人公達閉じ込めたりします。ゾンビメイクは皮膚ボロボロの「サンゲリア」タイプですが、マスク剥がれ気味で地肌見えてる所あるのはご愛敬。ゾンビの数も一度に登場するゾンビの数は少ないですね。何時の間にか他の客達もゾンビになってましたね。
地下駐車場のシャッター上げたり、主人公達の乗った車ゾンビに襲われながら押したり、ヒロイン他のゾンビから守ったり指寿司食べさせたりする恋する寿司屋ゾンビの最後の漢っぷりは泣かせます。
お食事シーンやグロ描写はお国柄故規制が強いのかほぼないですね。
後半になるに従ってデパートからの脱出劇の中で仲間が次々死んでいき、ドンドンシリアスになっていきます。駐車場でゾンビの群れと戦っているモーディの前にゾンビ化したビッグが現れた時のモーディの笑顔が切なくて良いですね。後半のゾンビとの攻防戦は見応えありました。
脱出に成功したモーディ―とヒロインが迎えるラストも秀逸です。こんなヘビーなラスト迎えるとは思ってなくて意表突かれますが、ゾンビ映画らしいバッドエンドながら何処か切なさも漂っていて印象に残るものになっています。特典のアナザーエンディングではなくこちらのエンディングにして正解だと思います。
今はDVDも中々手に入り辛いかもしれませんが、ゾンビ映画ファンなら必見のアジアンゾンビ映画だと思います。