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もののけ姫のqiricaのレビュー・感想・評価

もののけ姫(1997年製作の映画)
5.0

人生で初めて夢中になった映画はもののけ姫かもしれない。
これほど何度見ても毎度新鮮な気持ちになれる映画は他にない。

毎日1人で留守番をしていた4歳の私は冒頭に出てくる祟り神に恐れながらも必死に喰らいつき必死に孤独と時間と戦っていた。

そして大人になって、この作品は生きることに苦悩する子ども達へ贈られたものだということを知って少し納得した。
私はあの頃、紛れもなく救われていたんだ。

たまにジブリのなかで何が好き?という質問をするけれど、これに対する答えはどんな心理テストよりその人の性格や信条が反映されている気がする。

例えば私は、善悪が何かも分かっていない頃からもののけ姫が一番好き。私はそういう人。
きっと、まだ何も知らないあの頃から美醜や死生観、この不条理な世界の意味に対して疑問や探究心を抱いていたのだと思う。

そんな私にとってこの映画はこの心を導き信じ続けられる標で、言うまでもなく絶対に映画館で見て欲しい作品。

彼らの熱さ、内情、音や絵の細部、色彩が私の身体の隅々まで伝わった。(キャラクター、製作陣、この映画に関わる全ての愛に対して

初めて映画館で鑑賞してタイトルから終焉まで何度か嬉し泣きをした。
まさか生きているうちに上映されると思っていなかったし、エンドロールがカットされたVHSを愛用していて最後までちゃんと観たことがなかった。

今まではただ、村に平穏が戻り、共存への希望を見出し、めでたし、おわり。とずっしり明るい気持ちで見終わっていた。
しかし唄とクレジットが流れ出しオーケストラが奏でる壮大な音が私たちを包み込んだあの瞬間は鳥肌が立った。

これだけ魂のこもった映画を私はまだ他に知らない。
アニメの素晴らしいところは既成のものには一切頼らず最初から創作しているところだと思う。


「世の中には、絶望の只中にいたとしても、美しいものがあるということを見せてあげたい。」という監督の想いはしっかり観客に届いています。ありがとうございます。


最後に、
これからも森や自然、生き物、美しい多くの心は絶え間なく死んでいくだろう。
けれどそれらの死を無駄にするか意味を持たせるか、つまり生死を与えられることはシシ神様だけではなく私たちにも出来るはず。

憎しみや悲しみに負け、心を悪魔に売る祟り神になんてなりたくない。

生きるに値することはこの世界に必ずある。
目と耳と心に響くものだけを信じ続ける。

私はこれがあるからまだ生きていけるんだ。
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