qirica

ジョーカーのqiricaのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.4
シニシズム的アイロニーの連続

自分のことですらたまに見失うのに人に全ての理解を求めるなんて愚行だし結局望むものは自分にしか与えられない。
あれほど憎むほど人を想ったことはないけれど、血を塗り重ね自我を手にしていくジョーカーに軽蔑や敬意にも似た情けを払い、どこかで私は悪の偶像に共鳴していた。

あったかいハグと優しい言葉があれば正気を保てただろうか。そもそもこんな世界で正気でいる私達が狂っているのか。

笑い泣き喘ぐほど苦しんだ命の数や悪の意味を皆が知っても、無意識に人を嘲笑い傷つける愛なき傍観者と社会は血に染まった悪魔を生み続ける。

そして限界を越えればきっとこの仮面も恐ろしいことをしてしまう。自らに銃口を向けるのか相手の脳天をぶち抜くのか街を火の海にするのか、誰にでも悪は潜んでいるからこそ、いつ暴発するか分からない恐怖に駆られた。

復讐を終わらせるには見せかけの人生を甘受するしかないのかしら。
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