けまろう

おとし穴のけまろうのネタバレレビュー・内容・結末

おとし穴(1962年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

『おとし穴』10年以上ぶりに改めて鑑賞。昭和の炭鉱もの。不可解な殺人事件に端を発する奇妙なミステリー。被害者は幽霊として物語の語り部として観客が如くドラマを目撃し、田中邦衛演じる不気味な白スーツの殺し屋が暗躍する。炭鉱会社が強まる労働組合の勢いを減らそうと画策した謀略で、結果的に二つの労働組合長含む四人の死者が出たものの労働組合の力は弱まることに。使用者、つまり経営陣の狙いは見事果たされ事件はお蔵入りになったというオチ。人間が道具のように使われていた時代、高度経済成長期。本作の原作者でもある安部工房は短編作品『棒』でそうした人間性の消失に警鐘を鳴らしていたが、より具体的な形に落とし込んだのが本作とも考えられるかもしれない。炭鉱問題という意味ではイギリスの『リトルダンサー』や『パレードへようこそ』を彷彿とさせる。人間性の消失という意味では中国のドキュメンタリー映画『ベヒモス』の方がニュアンスは近いかな?
武満徹の不安定な音楽も先の読めないミステリーな合っていてクセになる。夜逃げするシーンや長屋越しのロングショットなど唸るカットもちらほら。なお、撮影は三菱鯰田鉱業所で行われたとのこと。
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