みゅうちょび

プリンセス・アンド・ウォリアーのみゅうちょびのレビュー・感想・評価

3.8
「ランローララン」のトム・ティクヴァ監督作。余りに普通でない設定で、その設定がとても重要で、そこをお伝えしないと、多分本作の良さが全く伝わらないという、とてもレビューしにくい作品…(~_~;) つか、日本語力が足りないだけか…
大好きなだけに、とてもストレスを感じます。

簡単に言うと、フランカ・ポテンテ演じるシシという内向的な女性が事故にあって応急処置して命を助けてくれた男性(ベンノ・フユルマン演じる)ボドに運命を感じ、彼を探し出すも思わぬ事態に巻き込まれてしまうという話なんですが… 色々あって結構複雑なお話です。

主人公2人の出逢いのシーンが他に類を見ないほどユニークで印象的。

シシはそれまで、外界との接触もあまりなく、男性を意識したことなどもないような女の子で、事故に遭い、大型トラックの下で横たわりもうろうとした意識の中で彼女が初めて感じる男性の汗の匂いとか、体温とか、呼吸とか…
ボドは冷静にシシの喉にナイフで穴を開けてストローで血を吸い出し、呼吸出来るようにしてやるんですが、そのストローからぷつぷつと溢れ出すシシの血とか、それを吸い出しては吐き出すボドの口の中で感じているだろう血の味とか…
ひとつひとつの映像が実に繊細にその状況を表していて、魅入ってしまいます。この監督だからこそ後に「パフューム ある人殺しの物語」で香りを視覚的に表現できたのだなあと納得です。

シシが精神病院の看護師という特殊で不快な環境設定やボドが犯罪者であることなどから、本作が実はファンタジーというか、かなりスピリチュアルなことをテーマにしているというギャップは観るひとの好き嫌いが分かれるところだと思います…わたしはそれにどっぷりハマってしまいました。

今ある自分の世界から抜け出したい!そんな時、もしかしたらこれかも!?と思う何かを掴んだら、それに賭けてみる価値はある。

シシが薄れゆく意識の中で掴んで離さなかったのは、ボドの服の袖についていたボタン。

ロマンチックな恋愛ものを想像して観るとかなり違和感があるでしょうから、心に封じ込めた何かを持った特殊な状況にいる男女が出逢い、心の扉を開いて外界へと踏み出す話しと思って観るのが良いかと…

ハマればハマる。お気に入りの一本になると思います。

友達は、あまり好きでないと言ってました(^◇^;)
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