佐藤でした

プレイタイムの佐藤でしたのレビュー・感想・評価

プレイタイム(1967年製作の映画)
4.0
遠くない未来。パリにやってきたユロ氏は、ガラス張りの超高層ビルが立ち並ぶ街並みと化した慣れないパリ市街で、アメリカからの団体旅行客らと共に右往左往する。そのうちの1人、若い娘バーバラと一日のうちに何度もすれ違い…。


高層ビルの林立、ガラスをふんだんに使ったスッケスケの近未来的建築、なんやわからんピコピコボタンの数々。

古典的な喜劇を得意としてきた、かのジャック・タチも、60年代に起こった空前のSFブームにすがさず乗っかったというわけだ。

ビルのガラスが透明すぎて目に入らず、窓越しにタバコの火をもらおうとしたり、ガラスの反射で向こう側の人と入れ違いになったりと、SFとてタチ監督は我がコメディの道を行く。

しかし自身が集大成と銘打った通り、さすがはこれ絶品でした。

超高層ビルや空港・博覧会場・アパート・オフィスなどのシーンは、タチが18億円もの私財を投じて、パリ郊外に巨大なセット(2500平方メートル!)を作って撮影したというのですから!そして興行的には惨敗したというのですから!
今そんな作品を108円で借りて見られる民は、有り難くこれを頂戴し、完璧主義の上をいく完全主義者の彼の前にひれ伏すしかないだろう。

映像は完全なカラーだが、ブルーグレー色を帯びた全体に、赤・ピンク・黄色など一部差し色だけが強く発色しているのが印象的だ。これはSFってこともあるし、メリエスの「月世界旅行(1902)」の着色版を想起させる。

また、日本人の団体ツアー客は小津映画に出てきた人々に似ている。それが考え違いだとしても、カメラ×メガネ姿で、戦後の好景気にフランス旅行に出向いた日本人を見掛けたみたいで嬉しかった。

街を舞台にした前半と、オープン初日で尋常じゃないバタバタ劇を繰り広げるレストランでの後半がある。
壁の塗装も乾いておらず、マダムの注文を取る時分にまだ床タイルの一部を貼っているような状態だ。

それでも客足は止まらないし、接客はなってないし、料理はまともに出ないし、ユロ氏は来るしで、もう店はカオスを極めます。

…なんというか映画としては、がやがやとしているだけで、なんのこっちゃ無いんだと思うんですけど。

【人間が世界を動かしていると思ったら大間違い。誰も太刀打ちできない巨大なウネリの中にいるんだよ。ただ、人間の順応性には驚くね。一見アホだけど、困難な状況も何とかこんとか楽しんじゃうから凄いよね!】と、

神のような存在の人(タチ監督)に、バカにされているんだけど、こっちが怒る前に褒められちゃって、変な気持ちになる、みたいな。そんなコメディだった気がします。
佐藤でした

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