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血まみれギャングママの一人旅のレビュー・感想・評価

血まみれギャングママ(1970年製作の映画)
3.0
ロジャー・コーマン監督作。

1930年代のアメリカで銀行強盗を繰り返した実在の犯罪者、ケイト・バーカーとその息子たちの半生を描いたバイオレンス。

ケイト・バーカーを題材にした作品には、コーマン製作の『ビッグ・バッド・ママ』(1974)というのもある。そちらを先に鑑賞していたが、順番的には本作がオリジナル(第1作)。コーマン製作の作品は過去にいくつも観てきたが、コーマン“監督”作品を観るのは今回が初めて。

B級ムード満点。序盤、犯罪者になる前の少女の姿が映し出され、野蛮な肉親たちから性奴隷のような扱いを受けるという不遇極まりない演出で、“この純粋な少女がいかにして犯罪者に成り下がったか”その下地を、短いがインパクト絶大の映像で示して見せる。その後は、もうすっかり小太りブスおばさん化したケイト・バーカーの、犯罪者としてのストーリーが幕を開ける。

揃いも揃って頭のオカシイ連中ばかり。何の罪もない一般人を足で窒息死させたことを皮切りに、犯罪者の道をどんどん突き進んでいくケイト一家。人を殺すことにためらいのない姿が恐ろしく、一方で、離ればなれになった父親に似た人間だけは殺さないで見逃すという家族の間の妙な約束事が印象的。実の息子に母親の夜の相手を強要していることを匂わせたシーンなんかも気持ちが悪い。

次男なのか三男なのか、そのへんの細かい設定は良く分からなかったが、ケイトの息子・ロイド役で若き日のロバート・デ・ニーロが出演していることが本作最大の収穫だ。薬物に溺れ、恋人を母親に殺され、次第に正気を失っていく役柄。このあとハリウッドを代表する名優へとステップアップしていくわけだが、本作の時点ではそれほど存在感があるわけではない。何しろ、他の兄弟たちもそうだし、特に母親のイカレっぷりが前面に出ているため、デ・ニーロが演じたロイドは家族の中では“比較的”大人しく影が薄い。

そして、「B級映画=パクリ」を臆することなく実践してみせたクライマックスの大銃撃戦はなかなかの迫力だ。どう見ても『ボニーとクライド/俺たちに明日はない』(1967)を激しく意識した演出なのだが、バッタバッタと倒れていく息子たちとその姿を見て絶叫を上げるケイトの絶望の表情が印象的で、「ざまあみろ」的爽快感を生んでくれる。
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