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山の焚火のクリームのレビュー・感想・評価

山の焚火(1985年製作の映画)
4.0
スイスの雄大で美しい世界。その中で生きる家族に潜む人間のリアリティ。自然の中で生きていると生きる為にする事、しなくてはいけない事だけになって行くのかも知れない。本能だけになった時…。これは、私の解釈が歪んでいるかも知れないけど、ある意味ホラー。面白かった。
スイスの山奥で自給自足で暮らす4人家族。一番近くに住む祖父母とは、双眼鏡でやり取りをする。
ろう唖者の弟は、学校には通わず、働く父の手助けをし、将来教師になりたい姉ベックが彼に勉強を教えていた。弟は時々、感情を爆発させたり、奇声を発したりする。そんな家族が恐れていた問題は…。




ネタバレ↓




この映画を美しい作品と捉えた方には、申し訳ないので、読まないで頂きたい。歪んだ私の解釈です。

家族が恐れていたのは、坊やと呼ばれていた聾唖者の長男が大人になり、性に目覚める事だった。
ある日、弟は故障した芝刈り機に腹を立て、崖から落として壊す。父は怒り、彼を山の一軒家に追いやってしまった。そんな弟に食料を届ける姉。焚火を囲んで食事をした2人は一つの布団で寄りそう。あーあ、やってしまった…。そうなるよ。が、イヤらしさはなくて、動物の営みの様に自然にそうなってしまった感じ。荒々しくは無いです。少年は、ちゃんと教育を受けていなく、まして性教育など知らない。本能の赴くままに行動する。
姉は妊娠してしまう。母は、喜んでくれたが、父は2人共殺すと猟銃を娘に向け、弟と揉み合い父が死亡。母はそのショックで死亡。2人は、葬儀の準備をして、幕が閉じる。
家族も近所の祖父母も皆が少年の性の目覚めを恐れていた。だから、坊やなどと呼んで、いつまでも子供でいる様に願った。祖母が豚のいななきを聞いて獣姦の疑惑を抱くシーンは、生々しかった。
評価の高い作品で、気になっていたが、焚き火の一件からは、展開が早く面白かった。皆さんの様に神秘性とは捉えられ無かった。
人は隔絶された大自然の中で、男女バランスの取れた家族にしたらどうなるか?と言う実験を生で観ている様な感覚だった。1人を聾唖者でコミュニケーションが不足し、教育を受けていない本能的な部分が濃く出そうなタイプにしたのは、そう言う意図があったと思う。実験は、思った通り、子孫を残す為に交尾し、殺されそうになれば、父だろうが自分が生きる為に殺す。殺した後、彼はそんなに悲しんでいなかった。完全に本能の動物となった様に見えた。相手は姉だったけど、最悪母もあったと思う。そして、あの後を考えると恐ろしい。彼の子供が女児だったら…。怖い。これは、ホラーだ。面白かった。
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