ゆきゆき

エンティティー/霊体のゆきゆきのレビュー・感想・評価

エンティティー/霊体(1982年製作の映画)
3.7
主人公が幽霊にレイプされるという一見下卑たストーリーだが、話自体はシリアスで真面目。ここで描かれるの理不尽な性暴力に蹂躙された上に、周囲の理解が得られずに孤立していく女性という、普遍的なテーマである。

そもそも実在する人間が加害者の性犯罪でも、立件の難しさや被害者に対する無理解の苦しみなどは数多の創作物で描かれてきたこと。その上で一般的には存在しないという幽霊が犯人なら、どうなるのか。レイプそのものより、理解者の不在という部分で追いつめられていく主人公が見ていて痛々しい。

主人公が求めていたのは、何より理解者であったことは、ポルターガイスト現象を目の当たりにした親友に対する彼女の反応を見ると明らか。同じく超常現象を体験しながらも、寄り添うことを拒否して離れていった恋人との差が印象的。主治医にしても命がけで彼女を救おうとするだけの真摯さはあるものの、霊の存在を認めないという時点で真の理解者にはなれなかった。

とまあ、深くテーマについて語ってきたけどホラー映画としても、劇中のポルターガイストシーンや、主人公が目に見えない相手になすがままにされる演出など、真っ当に怖いです。今の時代にホラー演出や主人公像をアップデートしてリメイクしたら面白そうだと思いました。
ゆきゆき

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