ゴン吉

八甲田山のゴン吉のレビュー・感想・評価

八甲田山(1977年製作の映画)
4.1
雪中行軍の演習中に遭難して多数の兵士が死亡した八甲田雪中行軍遭難事件をもとに描いた実話ベースの作品   

高倉健、北大路欣也が主演、加山雄三、丹波哲郎、緒形拳、大滝秀治、東野英心、三國連太郎、森田健作、秋吉久美子らが共演、音楽は芥川也寸志。
原作は新田次郎の小説「八甲田山死の彷徨」。  

日露戦争開戦前夜の1902年(明治35年)1月。極寒の雪で覆われたロシアでの戦闘を想定して青森歩兵第五連隊と弘前歩兵第三十一連隊が八甲田山で雪中行軍の演習を実施する。弘前第三十一連隊は少数精鋭の27名で訓練に臨むが、青森第五連隊は重装備で210名の大隊で演習に参加するが.....  

明治時代の青森第五連隊の210名中199名が死亡した八甲田雪中行軍遭難事件をベースに描いた作品。
春夏は美しくのどかな八甲田は冬季には雪で閉ざされた極寒地獄となる。
天候が悪化した雪山と凍傷の恐ろしさを描いた映像はトラウムになる。
明治34年7月に、寒地装備・寒地訓練のため、軽い気持ちで演習の計画が提案される。
精査してみると無謀な計画であることがわかるが、ひとたび計画されると止めることができない組織体質。さらには現場の状況を的確に理解・判断できない無能な上官のもとで行動せざるを得ない兵士達が哀れである。
戦闘で死ぬならまだしも沢山の兵士が訓練で死亡し、やるせない。
さらに生き証人を残さないために、生き残った兵士たちは、戦争の最前線に配属されて抹殺される。
果たして現代の日本の巨大組織は変わったのか?
重厚な人間ドラマと組織論が描かれた名作です。
「天は我々を見放した」  

2024.2 BS12で鑑賞(4Kリマスター版)  
第1回日本アカデミー賞音楽賞を受賞(1978年)
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