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ピグマリオンのくりふのレビュー・感想・評価

ピグマリオン(1938年製作の映画)
3.5
【マイ・バトルシップ・レディ】

バーナード・ショーの原作はキチンと通読していないので、原作との差異を詳しくは知りませんが、本作単体では(英国らしき?)底意地の悪いコメディとして、フツウに面白いですね。

リメイクとも言える『マイ・フェア・レディ』の存在が大きいから、比べてしまいたくなり、すると残念な感じが目立ってしまうのですが、逆に比べることで見えてくる面白さもあります。

共同監督もしているレスリー・ハワードが入れ込んで作ったようですね。

彼が演じる“暴君”ヒギンズ教授は、若いせいもありますが、レックス・ハリソンより「許せる」感じ。まだ改心できそうな余白があります。イライザによろめく余白も透ける。若いと言っても40代半ばですが、典型的英国細イケメンな分、歳より若く見えるみたい。

ウェンディ・ヒラーは元々、舞台版でもイライザを演じていたそうですが、貧困女子から貴婦人に成り上がってゆく様は、オードリーのそれより自然です。中身がギュッと詰まった感じで、説得力ある演技もしています。

が、ルックスがちょっとね…(泣)。ドレスより軍服が似合いそうで残念。舞踏会で受ける女王の褒め言葉より、ヒギンズが最後、彼女にぶつける皮肉たっぷり?な例えの方が合っています。

ラストは原作と変えており、AとBの再会でハッピーエンドっぽく締めるわけですが、この演出だとAの思い込みにも見えますね。狙ったのだろうか?その方が原作心にも沿うし、私はそう受け取った方が面白いと思います。

これ、『マイ・フェア・レディ』の方も、70mm画面を生かした?AとBの妙な距離感から、そう受け取れると思っています。あちらの方が、再会する説得力薄いしね。

展開はミュージカルではないし、お話はサクサク進んでありがたい。90分程度(米英版で尺が違う様子)で終わり、『マイ・フェア・レディ』の大仰な進行に比べて爽快なのでした。

<2015.8.4記>
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