スローモーション男

サボタージュのスローモーション男のレビュー・感想・評価

サボタージュ(1936年製作の映画)
4.5
サボるわ

 すごい面白い!
ヒッチコックの久しぶりの当たり作品でした。

 破壊工作員のヴァーロックと映画館を経営する妻。次第に目をつけられたヴァーロックは時限爆弾の搭載されたフィルム缶を妻の弟に隠すのだが…。

 映画館に纏わる映画でありながら、その裏での破壊工作が交わってくるのは、虚構と現実を行ったりきたりするテーマとぴったり。
 シルヴィア・シドニーの悲しげな表情がとても良い。

 タランティーノの『イングロリアス・バスターズ』でも引用されたバスでフィルムを運ぶシーンは、時計を何度も見せるモンタージュを使い緊張感が増す。

 ヒッチコックは『バルカン超特急』や『見知らぬ乗客』でも一般人が後ろの陰謀に巻き込まれることが多いのだが、この作品もその様式を取るが、最後は自分も殺しをしてしまう。妻がヴァーロックをナイフで刺してしまうシーンは、手元や顔のクロースアップが見事でした。

 あと水族館のシーンは、オーソン・ウェルズの『上海から来た女』や押井守の『うる星やつら2 ビューティフルドリーマー』へ影響与えていると思う。