港町の税務署に務める腕利きの調査員で、不正を正す仕事に誇りを持つも裏社会との繋がりが見え隠れするラブホテル経営者の権藤英樹による所得隠しの証拠を掴めずにいた板倉亮子。実績が評価されて東京国税局査察部、通称「マルサ」へ異動になった彼女が訝しがる同僚の信頼を得て権藤の巧妙な脱税を暴く様を描いたコメディドラマです。
新東宝編集部で商業デザイナーとして活動した後に大映入社で映画業界入りすると俳優に監督とマルチな才能を発揮した伊丹十三が、『お葬式』と『タンポポ』で評価を確立した後に手掛けた1987年公開の作品で、伊丹作品では常連となる妻の宮本信子や山﨑努が演じる軽快な物語が受けて配給収入12億円を記録。日本の映画賞を席捲しました。
スタイルとしてはかなりコメディに振れていて、些かデフォルメが過ぎたキャラ造形によって素材が持つサスペンスにフォーカスしきれていないところはあります。それでも軽快なリズムと素晴らしい音楽で観る者の関心を引き付けていて、いいように使われる女の時代がいつまでも続かないことを宮本信子のパワフルな存在感で表す一作です。