Ryoko

ミュンヘンのRyokoのレビュー・感想・評価

ミュンヘン(2005年製作の映画)
4.5
公開当時劇場にて鑑賞。2016年冬、「ブリッジオブスパイ」の公開を機に再鑑賞。
スピルバーグ作品の中でもトップクラスに好みの作品。
ミュンヘン五輪にて、アラブ系のテロリストによりイスラエル選手11名が殺害される。イスラエルの諜報機関モサドによる報復が秘密裏に開始される。
「プライベートライアン」は20世紀の戦争を描いた映画。そして「ミュンヘン」は舞台は21世紀を15年過ぎた現在も進行中の戦争を描いた映画。
久々に見たけれど映像の作り、殺戮シーンのリアリティは一級品。 まるで1970年代の実際の映像を使った記録映画を見ているようだった。スピルバーグは、舞台となっている時代の雰囲気を再現することに本当に長けている監督であると思う。そして登場人物たちの役割と個性がわかりやすくだれにも感情移入しやすくなっている。007出演前のダニエル クレイグが気が強くていちばん軸がぶれない暗殺屋で出演。銃を持つポーズがすでに007。かっこいい。
スピルバーグ自身がユダヤ人であるけれど、この映画はイスラエルとパレスチナどちらにも肩入れしていない。この映画は、エルサレムという土地を巡る対立の要素は薄くしか描かれておらず、殺された仲間の復讐の連鎖が描かれる。
殺戮に次ぐ殺戮、仲間の死、自らもいつ死ぬかわからない戦場のような状況で、精神が蝕まれてく主人公を演じたエリック バナのやつれていく演技が痛々しい。
主人公が放つ「こんなことの先に未来は無い」 という言葉が染みる。
全てが終わった後、映し出されるのは、ワールドトレードセンター。その後も繰り返される負の連鎖、そして理不尽に奪われる多くの人の命を思うととてもやりきれなくなる。
Ryoko

Ryoko