kanaco

永遠の僕たちのkanacoのレビュー・感想・評価

永遠の僕たち(2011年製作の映画)
3.4
〈死〉を通して出会った若者たちのキラキラとした恋愛や奇妙な友情を描く。不良少年×余命数か月の少女というシンプル構成と常に物語の中心にある〈死〉という縁。死が身近にある若者たちの物語なのに悲観的でなく丁寧な雰囲気で描かれる様子が思いの外心地よい、不思議な感覚のラブストーリーでした😀✨(140文字)

****以下ネタバレあり&乱雑文****

◆あらすじ◆
高校生のイーノックの趣味は赤の他人の葬式に参列することだ。会ったこともない人の葬式にこっそりと紛れ込む。家族ともうまくいかず、学校にも行っておらず、友達は特攻隊員だった日本人の青年・ヒロシだけ。ある日、いつものように見知らぬ誰かの葬式に参列していると、参列者の少女に見つかってしまう。しかしそれをきっかけに少女…アナベルと度々会うようになる。彼女は脳腫瘍が再発し余命3か月を宣告されたばかりだった。「3か月あれば色々なことができる…」その数か月を共に過ごし始めたイーノックとアナベルの仲は急接近し、そしてヒロシも2人を見守るが…。

❶〈死〉を通して出会った若者たちのキラキラとした恋愛や奇妙な友情を描くラブストーリー

数年ぶりの再鑑賞。『ゴジラ-1.0』『⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎』『聖地には蜘蛛が巣を張る』…と、何故か最近、戦争の〈特攻隊員だった〉あるいは〈殉教・殉死を求められていた〉が生きて帰って来たために、いつまでも〈自分の中の特攻・戦争が終わらない〉とトラウマを抱える人物が出てくる映画を見ているなぁ~と思った時、ふとこの映画を思い出しました。

ただし、この作品に出てくる特攻隊員はその任務を実践し帰らなかった人であり、主人公となる〈恋人〉たちを見守る友人の役ですが…😶ちなみに監督はガス・ヴァン・サント。日本人役は加瀬亮さんです。

本作は〈死〉を通じて出会った若者たちのキラキラとした恋愛や奇妙な友情を描くラブストーリーです。若者の恋愛を描きますが派手さや賑やかさはなく、登場人物も限られており、演出も音楽も穏やかで静かめ…物語はどちらかというと柔らかくも淡々した雰囲気で進んで行きます😌

主人公の少年イーノックは、事故で両親を失ってから〈死〉と折り合いがつかず、非行とまではいきませんが褒められたものではない行動をとる繊細な若者です。赤の他人の葬式に紛れ込んで参列するのを趣味とし、学校へ行かずフラフラとしています。そんな彼がある日出会ったのは、脳腫瘍が再発したため余命3か月となった少女アナベル。〈死〉に対する“関心”から結びついた縁により、イーノックとアナベルの仲は急接近。そんな2人をイーノックの友人である日本人の青年・ヒロシが気にかけます。ヒロシは第一次世界大戦に参加し特攻隊員として命を落とした若者でイーノックだけに見える幽霊なのです。

❷不良少年×余命数か月の少女というシンプル構成と、物語の中心にある〈死〉という縁

恋愛映画の構成としてはとてもオーソドックスです。つまり、世の中からはみ出していたような迷える繊細な不良少年が、余命僅かなるもそれとちゃんと向き合っている少女と恋に落ち、紆余曲折ありながらも友人の助けもあってお互い愛を深め、しかしながら最初から約束された〈別れ〉が訪れる…というもの。それでも少し変わっているのは、彼らを最初に結び付けたのが〈死〉であり、物語の中心にずっとそれがあり、少年少女たちそれぞれの〈死生観〉が関わっているという点です。

〈両親と共に事故に会うも、1人だけ臨死体験をしたのち生き返り、なぜ自分だけ生きているのか苦悩し反発している彼氏〉と〈脳腫瘍が再発し、数か月後の確定した死に対し冷静に受け入れている彼女〉と〈死にたくない気持ちがありながらも、国のためにと自ら死へ飛び込んだ幽霊の親友〉…と、まだ10代か20代前半のうちに〈死〉と向き合わざるをえなかった戸惑う若者たちの人生が、出会って恋で輝きだすという点が印象的でした😌✨

ただラブストーリーといってもアナベルの未来は決まっているため、恋人たちの未来も決まっています。イーノックは繊細で心が安定せず、自分の中で腑に落ちないその境遇について癇癪を起こし他者に理由を押し付けるタイプの少年として現れます。そんな彼が〈3か月後に死ぬ彼女〉と〈戦争で既に死んでいる親友〉との触れ合いの時間から〈死〉に対してどのように気持ちを変化させていくか…という成長物語ともとれる作品かと思いました。

🐦💕🐝「面白かったかというと…3.4という、まぁまぁ感。私はラブストーリーが得意ではなのと、自分の不幸にかまけて不謹慎とブレが過ぎる繊細なワガママボーイ・イーノックの言動にやや“げんなり”したのですが(アナベルとヒロシが冷静であるので余計に際立つ)、一方で死が身近にある若者たちの物語なのに、(当然)楽観的ではないが逆に悲観的でもない、丁寧な雰囲気で描かれる温度が思いの外心地よく、〈死〉が結び付けた縁というのも相まって不思議なラブストーリー感を楽しめました😀✨」
kanaco

kanaco