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ティングラー/背すじに潜む恐怖のblacknessfallのレビュー・感想・評価

3.0
名前だけは昔から知ってる監督だけど作品を観るのは初めて。
ウィリアム・キャッスルを知ったのはジョン・ウォーターズ監督のエッセイで、キャッスルの映画はどれも客を驚かせるギミックの用意があって映画館でスリルとワクワクを体感できて楽しかった。的なことを書いてるのを読んでいずれ観たいと思ってたから、これがNetflixにあると知り鑑賞。

キャッスルのギミックは時代が時代なんでガイコツのオバケ👻が出てきたら劇場の天井からガイコツの模型がバサッと落ちてくるとか、かなりオーガニックでシンプルなものだったらしいけど、当時、映画のリアルを体感的に客席に伝える手法自体がなかった中、そうとうな人気を誇ってたらしく、「キャッスルが次に何を仕掛けてくれるのか?」て期待だけで集客できるほどだったとか。

この映画も人の恐怖をエサに成長するムカデとザリガニの合の子みたいな"ティングラー"が映画館に放たれ客達がパニックになるシーンがある。ティングラーは背筋から人体に入り込む。
ここで巧みなのは画面を真っ暗にし音声だけにして、「落ち着いてください」「ティングラーは叫べば襲ってきません、皆さん叫んでください」とアナウンスを入れて、さも、観客のいる映画館にティングラーが出現したように演出したこと。
実際、当時はここでみんなノリノリでギャーギャー叫んで楽しんでたようで、ティングラーにはリピーターが続出したらしい笑
映画のストーリー自体は雑で緩慢なんだけど、ギミックで楽しませることには最大の注意が払われていて、映画の冒頭にウィリアム・キャッスルが登場して「もしティングラーに侵入されそうになったら叫んでください」と監督の説明から映画が始まる。これがあるから映画館のシーンで観客みんなにここは叫ぶとこだ💡と分かるような構成になってる。
映画館によっては客席にランダムにバイブを仕掛けてこのシーンになると作動させ、ティングラーが侵入してくる恐怖を演出してたみたいで、今の4DXや絶叫上映の始祖と言えるんだよな。ウィリアム・キャッスルの凄さは、体感することのバリューにいち早く気づいたことだね。

しかし、ギミックにこれだけ細心の注意を払い、緻密な計算するんなら、ストーリーにももう少し気を配ってほしかったな笑
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