にゃんこむ

マイネーム・イズ・ハーンのにゃんこむのレビュー・感想・評価

マイネーム・イズ・ハーン(2010年製作の映画)
4.5
ただ善良に暮らしている人が、ごく一部の悪人の行動によって風評被害や差別を受けたりするという悲しい出来事をテーマにした作品。
フォレストガンプのような作品かと思っていましたが、なかなかに重めは題材でした。
けれどお話は重くなりすぎず、最終的には人間賛歌に仕上がっているのがとても良いポイント。

○インド人のリズワンはアスペルガー症候群を患っていた。インドで暮らしていたが同居している母の死後、サンフランシスコにいる弟の元に身を寄せ営業マンになる。営業先の美容室で知り合ったインド人の女性マンディラに惚れたリズワンは猛アタックの末結婚、イスラム教徒のリズワンとヒンドゥー教徒のマンディラという宗教の違いを乗り越えて結ばれた。
マンディラとその連れ子のサミールと良い関係を築いたリズワンだったが、アメリカ同時多発テロ以降イスラム教徒がアメリカで差別されるようになると、その生活にも陰りが見え始め……。

主人公のリズワンを演じるのはシャー・ルク・カーン。
『ハッピー・ニュー・イヤー』の時はとってもイケメンでカッコイイ役でしたが、こういう役もアリですね。
前半は、アスペルガー症候群の男性が結婚するまでのロマコメ。『フォレスト・ガンプ』や『シンプルシモン』のようなテイストで、人と目を合わせられないリズワンが、弟に無理やり営業の仕事を押し付けられてしまい、障害があるから難しいかと思いきやトントン拍子に意中の相手までゲットしてしまうというサクセスストーリー。リズワンの素直さから結婚相手の連れ子という微妙な関係のサミールとも心を通わせ幸せな結婚生活……かと思いきや、アメリカ同時多発テロが怒りその幸せな生活もボロボロと崩れ去ります。
このハッピーな展開からの落差が凄い。鬱展開です。

後半は、大統領に会い直訴するためにリズワンが旅をするロードムービー。
道中の人々は悪人もいれば善人もいる。けれどリズワンが深く関わった人々は、リズワンを”テロリストの仲間”として見る人は一人もいません。それは、リズワンという一人の人間をきちんと見ているから。

テロが起ってしまったことは悲しい出来事ですが、同じ国だったり同じ宗教を信じる善良な人々に怒りの矛先が向いてしまうのは、ただただ無意味な八つ当たりだということに気づかされました。
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